排出量取引制度、2026年度から義務化へ 経産省が中間整理案、公正な市場形成へ具体案示す

12月9日、政府は産業構造審議会・排出量取引制度小委員会において、2026年度に本格導入される排出量取引制度(GX-ETS)の制度設計に関する「中間整理(案)」を示した。2050年カーボンニュートラル実現に向け、企業の削減努力を促す新たな仕組みが本格稼働する。
中間整理案によると、対象となるのは直近3カ年度平均でCO₂直接排出量10万トン以上の事業者。これにより、エネルギー起源CO₂排出量ベースで6割をカバーする規模の制度となる見込みだ。
制度の柱となる排出枠の割当方法については、業種別ベンチマーク方式とグランドファザリング方式を併用する。鉄鋼や化学などエネルギー多消費産業では、同業他社の排出原単位上位X%を基準とするベンチマークを導入。一方、技術的に基準設定が難しい業種では、過去排出量に削減率を乗じる方式を採用する。
また、企業が排出量を算定・報告する際には、第三者による確認が義務付けられる。制度開始後3年間は体制構築に重点を置き「限定的保証水準」の確認にとどめるが、2029年度以降は大規模事業所に対し「合理的保証水準」への段階的引き上げを行う方針だ。
排出枠取引市場の安定運営のため、政府は毎年度、排出枠価格の上下限を設定。上限超過時には上限価格の1.1倍の支払いで義務履行を認め、下限割れが続く場合は排出枠を買い取る「リバースオークション」を実施する。
クレジットの使用については、J-クレジットやJCMクレジットを排出量の10%まで認める。ただし過度な依存を避けるため、需給状況を見ながら上限の見直しも検討するとした。
また、中間整理案では、GX-ETSの制度運用に不可欠な要素として、企業の移行計画の扱いも整理された。企業には、カーボンニュートラルに向けた中長期的な削減戦略や投資方針を、中期経営計画などの公表文書に明示することが求められる。
移行計画に含まれる主要内容は以下とされる。
- 2050年カーボンニュートラル実現に向けた戦略の明示
- 削減ロードマップ(フェーズ別の施策・投資計画)
- 研究開発・設備投資などの具体的取り組みの位置づけ
- 削減効果の見込みや技術導入計画との整合性
特に、追加割当(インセンティブ)を受ける企業については、研究開発やGX技術区分への取り組みなど、移行計画と密接に関係する情報の提出が必要となる。
>>>関連するお役立ち資料:<先進事例付> 気候関連開示・移行計画 統合実践ガイド(TCFD/IFRS S2/TPT対照表)
GX-ETSは、企業の脱炭素投資を促す「成長志向型カーボンプライシング構想」の中核をなす制度である。政府は今後、産業界や関係省庁との協議を踏まえ、年度内にも実施指針を確定させていくと考えられる。

