<速報>EU、サステナビリティ規制 大幅簡素化で決着──CSRD・CSDDDの対象を大幅縮小

12月8日、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)・CSDDD(Corporate Sustainability Due Diligence Directive:企業サステナビリティデューディリジェンス指令)を含む 「オムニバス法案 I(Omnibus I)」の最終交渉(トリローグ)で合意に達し、9日には欧州議会はブリュッセルで記者会見を開き、企業向け規制を大幅に簡素化し、対象企業を絞り込むなど法案の骨子を発表した。

本合意は、2025年2月に欧州委員会が提案したサステナビリティ規制の簡素化パッケージを基礎とするもの。年内にも議会(本会議)と加盟国の正式採択に進む見通しで、2026年から順次国内法化が始まる想定だ。

なお、今回の決着までには、欧州委員会が提示していた「簡素化(Omnibus I)」案を巡り、議会内での対立があり、一時は本会議で否決され混乱も生じたが、最終的には「規制負担軽減」と「対象企業の大胆な絞り込み」で折り合いがついたと言える。

|CSRD:報告義務の対象は一部の大企業のみ

◎ EU企業の新基準

EU全体の対象企業は 70〜80% 減るとみられている。

  • 従業員 1,000人以上 :従来の「大規模企業(250人以上)」から大幅に縮小。
  • 年間純売上高 4.5億ユーロ超

|非EU企業 “域外適用基準”が設定

CSRD は非EU企業にも域外適用される。今回の簡素化においても 域外企業の扱いは維持されつつ、対象が明確化・縮小された。ただし、EUで一定規模の売上があればCSRD報告義務が発生する場合が考えられる。

◎ 非EU企業(non-EU undertakings)の適用基準

  • EU域内売上が 4.5億ユーロ超 の企業グループ(※従業員数要件は EU域外企業には直接適用されない)

◎ EU企業と同等のESRS(簡素化後)に基づく

  • セクター別基準は任意
  • 開示項目は定量中心へ再編
  • データ要求の過度なサプライチェーン波及は削減

関連する解説記事>>>ESRS変更ポイント公表:簡素化・ダブルマテリアリティの柔軟化を解説(2025年版)


|CSDDD 大規模企業に限定

◎ EU企業

  • 従業員 5,000人以上
  • 売上 15億ユーロ超

◎ 非EU企業

  • EU域内売上が 15億ユーロ超

◎ 実施内容

  • サプライチェーンの網羅的特定義務はなし
  • 気候移行計画の義務はなし
  • 「リスクベース・アプローチ」に集約
  • 罰則は世界売上の最大3%

今回の政治合意を経て、今後はまず欧州議会本会議およびEU理事会での正式採択手続き(政治合意内容をEU法として確定させる最終手続き)へと進む。早ければ 2025年末から2026年初頭にかけて最終承認が行われる見通しである。

正式採択後、EU加盟国は改正内容を各国法へと落とし込む国内法化(トランスポジション)を順次進めることになる。国内法化のタイミングは国により差が出る可能性があるものの、全体としては 2026年を中心に導入作業が進むとみられる。

(原文)Deal on updated sustainability reporting and due diligence rules
(日本語参考訳)持続可能性報告とデューデリジェンス規則の更新に関する合意

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