SBTi、ネット・ゼロ計画における炭素クレジットの利用について、反発を受け「変更はない」と明言

SBTi、ネット・ゼロ計画における炭素クレジットの利用について、反発を受け「変更はない」と明言

4月11日、サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアティブ(SBTi)理事会は、Scope 3排出量に対応するために、排出削減クレジットなどの環境属性証明書(EAC)の使用を拡大することにより、企業のネット・ゼロ目標設定の基準を更新する計画を最近発表したことに対する内部からの鋭い反発を受け、「SBTiの現行基準に変更はない」ことを明らかにした。

今回の明確化は、SBTiのスタッフから理事会の発表に回答する書簡が報告されたことを受けたもので、スタッフはこの声明に「深い懸念」を抱いており、CEOと理事会メンバーの辞任を求めていると報じられている。

SBTiは、科学的根拠に基づく環境目標設定を標準的な企業慣行として確立することを目標に2015年に設立された。組織の主な機能には、気候科学に沿った排出削減とネット・ゼロ目標のベストプラクティスの定義と推進、科学に基づく目標を設定する企業への技術支援の提供、排出削減目標の独立した評価と検証を企業に提供することなどが含まれる。

SBTiは昨年、ネット・ゼロ・エミッション達成に向けた企業の脱炭素化コミットメントを評価・認証し、企業の科学的根拠に基づく気候変動目標設定のための青写真として使用されるSBTiのコーポレート・ネット・ゼロ・スタンダードの 更新計画におけるエネルギー属性証明書の使用に関する証拠募集を開始した。2021年に発行された当初の基準では、排出削減のためのカーボン・クレジットは認められていなかった。

先週の発表で、SBTi理事会は、改訂された基準でのエネルギー属性証書の使用は、スコープ3の排出削減に限定されると述べ、基準には「特定のガードレールと閾値、およびこれらの証書に適用される規則」が含まれると付け加えた。

スコープ3の排出は、サプライチェーンや製品の使用など、企業のバリューチェーンに起因するもので、一般的に、ほとんどの企業の排出の影響の大部分を占め、多くの場合、全体の排出量の90%以上を占めるが、企業が直接管理できない領域で発生するため、測定や管理が最も難しい排出でもある。

排出量削減が困難な排出量を相殺するためのオフセットは、ほとんどの企業のネット・ゼロ計画の一部となってい るが、一部の企業の温暖化対策の誓約は、実際の排出量削減よりもオフセットに依存しすぎているとして、批判の的 となっている。

例えば、気候変動に特化した非営利団体NewClimate InstituteとCarbon Market Watchが、排出量の多い企業を対象に行った最近の調査によると、これらの企業は、総排出量の23%から45%をオフセットする計画であり、企業の気候変動戦略に含まれる土地利用に関連するオフセットの量は、そのような資産の世界的な利用可能性を大幅に上回っていることがわかった。さらに、カーボン・オフセット市場は、参加者が質の高いプロジェクトと低いプロジェクトを区別できないことが多く、プロジェクトの有効性を評価するためのデータが不十分であったり、一貫していなかったりするなど、一連の課題に直面している。

SBTi理事会は、その明確化の中で、「スコープ3に対するEACの使用は、証拠に基づいて行われる」と述べ、更新基準の草案作成段階に先立ち、変更の可能性について7月にディスカッションペーパーを発行する予定であることを明らかにした。理事会はまた、規格のいかなる変更も、組織の標準作業手順書に従って行われることを確認した。

SBTiの創設者の一人である環境保護団体WWFは、今回の明確化を受けて発表した声明の中で、「オフセットは、企業の事業活動、製品、バリューチェーンからの排出を削減するための代替物にはなり得ない」としながらも、「残留排出量のごく一部に対処するための限定的な適用」であり、「全体的かつ科学的に定義された削減経路の一部として、説明責任を強化し、追求する」ことを裏付けとしたカーボン・クレジットを利用する余地も残している。

【参考ページ】
(原文)Climate targets group under fire over Bezos-backed carbon offsets decision
(日本語参考訳)ベゾスのカーボンオフセット決定をめぐり非難を浴びる気候目標団体

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