3月27日、資産運用最大手ブラックロックのCEO、ラリー・フィンチは投資家へ向けた2024年次の見通しを発表した。その中で、エネルギー転換が米国でより論争的になったとしても、低炭素エネルギー源への世界的な転換を資本市場の機会とリスクの最も強力な推進力のひとつと見なし続ける述べた。
フィンクは、エネルギー転換を「メガフォース」と表現する一方で、特にエネルギー安全保障に対する世界的な関心の高まりを踏まえ、伝統的な炭化水素ベースのエネルギー源の役割が引き続き必要であることを強調し、「ブラックロックは伝統的なエネルギー企業からの売却を支持したことはない」と述べ、エネルギー企業を「ボイコット」しているとの米国の政治家の主張に触れた。
この書簡は、フィンクが21世紀半ばの最大の経済的課題として言及した、高齢化・長寿化する人口に老後の経済的保障を提供することや、世界的な経済のデジタル化と脱炭素化に伴い大量のインフラを建設する必要性などに対処する上で資本市場が果たす役割に主眼を置いている。
インフラというテーマの中で、フィンクは主にエネルギーに焦点を当て、「私が50年近く金融に携わってきたが、エネルギー・インフラに対する需要がこれほど高まっているのを見たことがない」と指摘し、低炭素エネルギー源への移行とエネルギー安全保障の達成という2つの目標が原動力となっているとし、これらの、時に相補的、時に相反する目標に取り組む必要性を「エネルギーのプラグマティズム」と呼んだ。
同書簡は、米国内の反ESG政治運動からブラックロックへの圧力が高まり続けている中で出されたもので、ブラックロックが社会的アジェンダに従っている、つまり「ボイコット」してエネルギー企業に損害を与える活動をしていると非難する共和党の政治家たちから、ブラックロックはしばしばスポットライトを浴びている。最も注目すべきは、今月初め、テキサス州教育委員会が、ブラックロックの 「ESG運動における圧倒的かつ持続的なリーダーシップ 」を理由に、投資大手から85億ドル(約1兆円)の資金を引き揚げると発表したことだ。ブラックロックはまた、化石燃料企業への継続的な投資をめぐって、環境保護団体からも批判を受けている。
フィンクは、エネルギー転換が「米国でより論争的になっている」ことを認めつつも、「議論の外では、多くのことは変わっていない」と述べ、脱炭素化に向けた重点的な投資は継続しているとし、その一例として、欧州では「ネット・ゼロは依然としてブラックロックのほとんどの顧客にとって最優先の投資課題である」と指摘した。
フィンクは、政治指導者や送電網の運営者から寄せられるメッセージは、「極左や極右の活動家からよく聞かれる、自然エネルギーか石油・ガスのどちらかを選ばなければならないという話とはまったく正反対」であり、ほとんどの人が、現在はどちらも必要だと考えていると付け加えた。
【参照ページ】
(原文)Larry Fink’s 2024 Annual Chairman’s Letter to Investors
(日本語参考訳)ラリー・フィンクの2024年年次投資家への手紙