3月10日、バイデン大統領は、ワシントンで欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談した。米国とEU間の貿易に関する緊張を緩和し、グリーン経済の実現に向けた統一的な焦点を維持するとともに、クリーンエネルギー技術やサプライチェーンに対する中国の支配に共同で対処することを希望している。
フォン・デル・ライエン氏との会談は、ロシアのウクライナ侵攻に合わせてバイデン氏がここ数週間、欧州の首脳と行ってきた会談の一つである。また、気候変動、エネルギー安全保障、中国のさまざまな活動や行動に対する懸念も共有している。しかし、金曜日の会談の大部分は、米国とEU間の経済問題に焦点を当てることになる。
フォン・デル・ライエン氏は、バイデン政権のインフレ削減法(IRA)、つまりクリーンエネルギーへの投資を促進する産業政策が保護主義的であり、欧州経済に悪影響を及ぼす可能性があるとの懸念を示した。
IRAは、気候変動への投資のために3,690億ドル(約48兆円)を用意しており、EVやバッテリーのようなクリーンエネルギーの技術を製造する企業に減税を約束するが、その事業所が米国内にある場合に限られる。欧州の指導者たちは、EU企業がこのような税制優遇措置を現金化するために欧州から逃げ出すことを懸念しており、EU経済が危機に瀕する可能性があると述べている。
IRAが成立したとき、自動車大手のVolkswagenは、東欧のバッテリー工場の計画を保留にしたと発表した。工場を米国に移転すれば、100億ドル(約1.3兆円)以上の節約になるからだ。それ以来、Volkswagenは、選択肢を検討するために、EUが対抗策を提示するのを待っている。
フォン・デル・ライエン氏は、クリーンエネルギーへのインセンティブを得るために、欧州企業が米国に流出することのないよう、IRAの変更について交渉しようとしている。ドイツでは、専門家が、それは国の経済にとって現実的な脅威であると言っている。EU向けにまとめられ、ドイツのメディアに流出した内部報告書によると、ドイツの産業界では4社に1社が国外退去を検討している。化学大手のBASFや自動車メーカーのBMWといった多国籍企業も、エネルギーコストの高さを理由に撤退を検討しているという。
バイデン大統領は、以上の懸念の一部に対処することに前向きな姿勢を示している。特に、「EVバッテリーのサプライチェーンと、それに関わる重要な鉱物を中心に」、EUと合意に達する見込みだ。また、ホワイトハウスは、米国とEUが協力して、クリーンエネルギーへの移行に必要なレアアース鉱物とその加工・製造の多くを支配する中国への依存を減らすことができるようなパートナーシップの構築を希望している。
【参照ページ】
(原文)Joint Statement by President Biden and President von der Leyen
(日本語参考訳)バイデン大統領とフォン・デル・ライエン大統領による共同声明