2月1日、欧州委員会は欧州のネット・ゼロ産業の競争力を強化し、EUの気候ニュートラルへの移行支援を目的とした一連の戦略および取り組みである「グリーンディール産業計画」を立ち上げた。
同計画は、ネット・ゼロ産業を促進するための簡素な規制枠組みの構築、グリーンな移行に向けた欧州の労働力のスキルアップ、投資と融資へのアクセスの加速、クリーンテックと原材料に関する世界貿易協力の強化といった主要分野に焦点をあてている。
本計画は、先月ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会で、EU委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長が初めて紹介したものである。急速に台頭するクリーンテックとネット・ゼロに焦点を当てた経済の革新と生産の拠点としての地位を確立しようとする地域や国々の間で、国際競争が激化していることを受けてのことであった。
より予測可能で簡素化された規制環境を作るための計画には、EUのネット・ゼロの産業能力およびネット・ゼロ技術の迅速な展開を促進するために、より迅速な許認可を目的としたネット・ゼロ産業法の提案や、クリーンエネルギーを中心とする技術の製造に必要な材料へのアクセスを確保するための重要原料法が含まれる。また、同計画は、消費者が自然エネルギーのコスト削減の恩恵を受けられるようにする電力市場の改革も想定している。
金融・投資面では、主要分野への投資を促進するために、国レベルでの援助供与の簡素化と加速化を図るとともに、ロシアの化石燃料への依存を解消するためのEU計画であるREPowerEUや、欧州における持続的投資、革新、雇用創出のための投資を動員するInvestEUプログラム、低炭素技術の実証のためのEU資金調達プログラムであるEU Innovation Fundからの2,500億ユーロ(約35兆円)など、既存のEU資金を活用する。
欧州委員会によると、上流の研究・技術革新・戦略的産業プロジェクトのための資源増強を目的とした欧州主権基金も提案するという。
グリーンな移行に向けた労働力のスキルアップと再スキルアップのために、同計画には、戦略的産業を対象としたネット・ゼロ産業アカデミーの設立に関する提案が含まれている。若者、女性、高齢者の労働参加の改善、技能開発のための公的資金の調整、優先分野における第三国人のEU労働市場への参入促進にも焦点を当てる。
同計画の優先事項の1つは、他国のグリーン投資戦略の下で提供される補助金など、「クリーンテクノロジー分野における不公正な取引から単一市場を保護する」ことである。欧州委員会は、グリーンな移行を促進するために、世界的な協力を促し、貿易を可能にすることを目指しており、自由貿易協定のネットワークを発展させる計画であると述べた。また、欧州委員会は、原材料の使用者と資源保有国を集め、重要な原材料の供給を確保する「重要原材料クラブ」の創設を検討するとしている。
【参照ページ】
The Green Deal Industrial Plan: putting Europe’s net-zero industry in the lead