10月31日、Moody’s Investor Serviceは新しいレポートを発表し、4兆ドル(約588兆円)以上の上場債券が環境配慮に関連する高まった信用リスクにさらされており、2020年から27%増加し、2015年から2倍以上になっていることを明らかにした。
分析によると、環境リスクが「高い」または「非常に高い」セクターの債務の割合も増加しており、2015年には格付債務残高全体のわずか3%だったのに対し、5.1%に上昇した。
環境信用リスクが「非常に高い」とされたのは、石炭採掘および石炭ターミナル、化学品、鉱業-石炭を除く金属およびその他の材料、独立系探査・生産(E&P)、総合石油・ガス、精製・販売の6セクターであった。
本レポートでは、規制や政策の問題、環境上の危険、またはその両方の組み合わせなど、さまざまな原因から発生する可能性のある環境リスクについて検証している。信用の質に最も関連する環境配慮事項には、炭素移行、熱ストレス、洪水やハリケーンにさらされるなどの物理的な気候リスク、水管理、廃棄物や汚染、自然から得られる財やサービスへの依存度などの自然資本が含まれていた。
過去数年間における環境リスクにさらされた負債の増加は、主に、環境問題に対する意識の高まりが政策や投資家、企業の行動を促し、高リスクと分類されるセクターの数が増加したことによるものである。
航空会社は、将来の炭素排出規制による事業コストの上昇に直面し、競争上の理由からそのコストを顧客に転嫁することが難しいため、高環境信用リスクのカテゴリーに分類されたセクターのひとつである。同様に、タンパク質・農業セクターは、炭素移行や水管理への配慮、森林破壊や土地利用の変化、温室効果ガス規制の変更の可能性などの問題にさらされるため、高リスクとなった。高リスクのカテゴリーに入ったその他のセクターには、石油・ガス中流部門、石油・ガスサービス部門が含まれる。これらの新たな高リスク部門を合わせると、7,650億ドルの債務が計上されることになる。
本レポートでは、各環境リスクカテゴリーに対するセクターのエクスポージャーも評価し、格付けされた負債が4兆9,000億ドル(約721兆円)ある16セクターが非常に高いまたは高い「炭素移行リスク」に、負債が6兆4,000億ドル(約941兆円)ある14セクターが「物理的気候リスク」に、4兆4,000億ドル(約647兆円)の負債が「廃棄物と汚染リスク」に、1兆7,000億ドル(約250兆円)の負債が「自然資本関連リスク」に、1兆9,000億ドル(約280兆円)の負債が「水管理リスク」に高いエクスポージャーを持っていると明らかにしている。
【参照ページ】
(原文)Research Announcement : Moody’s – Environmental heat map: Sixteen sectors with $4.3 trillion in rated debt face heightened environmental credit risk
(日本語訳)Moody’s、高い環境信用リスクにさらされる債務が4.3兆ドルに増加