ShareAction、「Climate Action100+」のさらなる改善を要請。グリーンウォッシュを懸念
5月19日、英ESG投資推進NGOのShareActionは、 気候変動に関する世界最大の投資家イニシアティブ「Climate Action100+(CA100+)」の過去5年間のサイクルに対し、気候変動に関する有意義な進展をもたらすには程遠いと主張した。ShareActionは、本イニシアティブが掲げる目標を達成するためには、次の段階において署名機関が行う取り組みにより高い水準を設定する必要があると述べている。
CA100+独自の「ネット・ゼロ企業ベンチマーク」によると、本イニシアティブの対象企業のうち、短期的な排出削減目標や脱炭素化戦略を適切に策定している企業は12%未満に留まっている。また、資本支出を「1.5℃目標」に完全に整合させている企業や、気候リスクを反映した財務諸表を作成している企業はない。石油・ガスのフォーカス企業はすべて、パリ気候協定の目標とは矛盾するプロジェクトに資本支出を計画している。
CA100+のアプローチは、投資家が企業に気候変動対策を奨励するものである。エンゲージメントには、個人的な会合や手紙のやりとりから、年次総会での公式声明、取締役(再)選任の投票、株主総会決議の提出や投票まで、あらゆるものが含まれる。
ShareActionの新しい調査では、CA100+に署名した大手投資家60社の気候変動への取り組みを評価した。以下、報告を紹介する。
- 気候変動へのエンゲージメント戦略は、多くの場合、十分に明確化されていないか、全くされていない
- 気候変動への取り組みに関する報告は、一貫性がなく、曖昧である
- 気候変動への取り組みに関するケーススタディの質が低い
- CA100+への関与を強調することは多いが、活動内容や成果を報告することは稀である
上記の例を挙げると、
- 49の投資家(82%)が、気候変動へのエンゲージメントの目的や、エンゲージメントがうまくいかなかった場合のエスカレーション措置を明記していない。
- エンゲージメントの進捗状況を報告している署名機関は、わずか10社(17%)に過ぎない。
- 42の投資家(70%)が、気候変動に関するエンゲージメントのケーススタディを提供している。しかし、そのうちの12社は、エンゲージメントの対象となった企業名を挙げておらず、「その企業を監視する」「エンゲージメントを継続する」といった一般的な記述以外に、エンゲージメントの次のステップを示すものはなかった。
- 46の署名企業(77%)がCA100+の署名企業であることを公表しているが、自社がリードインベスターであるすべての企業の名前を挙げたのはわずか3社(5%)。
ShareActionは、以上のように目的、説明責任、成果に関する透明性が欠如しているため、投資家が排出削減の推進に影響力を行使せずに、イニシアチブに署名することでブランドをグリーンウォッシュする危険性があると述べている。
CA100+イニシアティブは、2023年以降の第2フェーズに移行する準備を進めており、ShareActionは次のように要請している。
- 署名要件を強化する
気候変動対策に関する最低限の透明性要件を定め、 投資家参加者にその遵守を義務付ける。 - エンゲージメントの水準を上げる
CA100+を通じて行われるエンゲージメントについて、最低限必要なエスカレーションを設定し、投資家参加者に約束するよう求める。 - 署名者の説明責任を向上させる
各重点会社の主幹事投資家と協力投資家のリストを公表・管理し、毎年更新する。 - 重点企業に対する明確な期待を確立する
各重点企業の参画目標とマイルストーンのリストを公表し、維持する。 - 活動と成果を報告する
CA100+ネット・ゼロ企業ベンチマークに照らし合わせたエンゲージメント活動と成果の集計を、年次進捗報告書において、各重点企業とのエンゲージメントに関する詳細なケーススタディとともに発表する。
ShareActionは、投資家が本イニシアティブに参加するためには、以上の透明性要件の遵守が前提となるべきであり、エンゲージメントに関する水準を高めることができない場合には、リードインベスターを解任すべきであると述べている。
【参照ページ】
(原文)Greater ambition and transparency needed to revive Climate Action 100+ initiative ahead of relaunch
(日本語訳)気候変動対策100+」の再始動に向け、より大きな野心と透明性が求められる