EU、グリーンエネルギーへの移行を拡大。ロシア化石燃料への依存削減のため約40兆円投資

EU、グリーンエネルギーへの移行を拡大し、ロシアの化石燃料への依存を削減するための約40兆円の計画を発表

5月18日、欧州委員会は「REPowerEU計画」を発表し、ロシアのウクライナ侵攻に対応し、ロシアの化石燃料への依存度を急速に低下させるための戦略の概要を明らかにした。同戦略には、再生可能エネルギーおよびクリーンエネルギー能力の展開を大幅に加速させる計画、エネルギー供給の多様化、エネルギー効率化の取り組みの強化が含まれており、今後5年間で2,100億ユーロ(約28兆円)の追加投資を提案する。

新計画に基づく2030年までの欧州委員会の投資提案には、再生可能エネルギーへの860億ユーロ(約11兆5,800億円)、主要な水素インフラへの270億ユーロ(約3兆6,400億円)、バイオメタン生産拡大のための370億ユーロ(約4兆9,800億円)、エネルギー効率とヒートポンプへの560億ユーロ(約7兆5,400億円)、化石燃料の使用を減らすための産業の適応に410億ユーロ(約5兆5,200億円)が含まれている。

新計画では、エネルギーの自立を促進し、グリーン転換を後押しし、長期的に価格を下げるために、「発電、産業、建物、輸送における再生可能エネルギーの大規模なスケールアップとスピードアップ」を要求。昨年発表されたEUの「Fit for 55」パッケージでは、欧州委員会は2030年までにEUのエネルギーの40%を再生可能エネルギーで生産するとの目標を掲げていた。新計画では、2030年の目標を45%に引き上げることを提案している。

本計画では、再生可能エネルギーの新目標を達成するための一連の取り組みとして、2025年までに太陽光発電の容量を倍増し、2030年までに600GWの設置を目指すEU太陽戦略の開始、新築の公共・商業ビルおよび新築住宅へのソーラーパネル設置を義務付ける法的義務、大規模な再生可能エネルギープロジェクトの許可を迅速に行う取り組みなどが概説されている。

今回の戦略には、EUが最近発表した再生可能水素の製造と利用の規模を拡大する目標も含まれており、2030年までに再生可能水素の国内生産量を1,000万トンに達し、さらに1,000万トンを輸入するという目標も含まれている。欧州委員会は、再生可能水素の定義と製造に関する2つの新しい委任法も公表し、製造が純然たる脱炭素化につながることを確保すると表明した。

【関連記事】EU、2025年までに水素製造能力を10倍に拡大することを計画

同計画はまた、EUのエネルギー効率目標を、行動変容の促進、家庭や産業を対象としたコミュニケーションキャンペーン、省エネを促す財政措置の活用を通じて、2030年までに従来のFit by 55の目標である9%から13%に引き上げるとしている。

【関連記事】欧州委員会、温室効果ガス排出源に対処する一連の立法案を発表。建物の脱炭素化など本格着手

【参照ページ】
(原文)REPowerEU: A plan to rapidly reduce dependence on Russian fossil fuels and fast forward the green transition*
(日本語訳)REPowerEU ロシアの化石燃料への依存を減らし、グリーンな移行を加速させる計画*。

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