IPBES、生物多様性と企業活動の関係を分析した報告書を発行 調達・バリューチェーン管理が鍵

2月9日、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)は、新たな報告書「Business and Biodiversity Report」を発行した。本報告書は、生物多様性の損失が経済活動、金融の安定、社会の福祉に対して重大かつ体系的なリスクであることを科学的に示し、企業に抜本的な転換を訴えている。

※IPBESは、150を超える加盟政府を持ち、世界中の研究成果を統合して政策提言を行う政府間組織。

報告書によると、2023年に自然に直接的な悪影響を与えた公的・民間の資金総額は推計7.3兆ドルに上り、うち約4.9兆ドルが民間資金、約2.4兆ドルが環境に有害な補助金だった。一方、生物多様性の保全・回復に向かう資金は2,200億ドルにとどまり、自然への悪影響を助長する資金フローとの差は大きい。

また、企業の自然への影響と依存の関係においては、自社のオペレーションにとどまらず、バリューチェーン全体に広がっていると整理されている。特に原材料調達段階では、生態系への圧力が集中する傾向があり、トレーサビリティの確保やサプライヤーとの協働が不可欠だとする。企業が自然関連リスクを実質的に管理するには、調達戦略の見直しが避けて通れない。

企業の情報開示においても課題があるとしている。

世界的に生物多様性への影響について報告している企業は1%未満にとどまっているとしている。他にも、金融機関では、自然関連リスクを投融資判断に反映させようとする動きがあるものの、影響を定量化するための信頼性の高いデータや分析モデル、将来シナリオが十分に整備されていないことが普及の障壁となっている。※なお、日本企業では自然関連財務開示タスクフォース(TNFD)への対応が進みつつあり、2025年9月時点で198社が宣言している状況。

報告書では、生物多様性の損失を止めるための取り組みが必要だとしている。特に、企業行動を後押しする「イネーブリング環境」の整備である、①政策・法制度、②経済・金融システム、③社会的価値観、④技術・データ基盤、⑤能力・知識——の5つがある。具体的には、開示義務化や規制の一貫性確保、有害補助金の見直し、持続可能な消費の促進、データ標準化とモニタリング技術の高度化、企業・政府・金融機関の能力構築、さらには先住民・地域コミュニティの知識の統合などが重要だ。

報告書が強調するのは、自然はもはや単なる環境問題ではなく、企業経営の中核課題であるという点だ。企業にはすでに、影響と依存を測定・管理するための手法や具体的行動例が提示されている。今後は、データ基盤の整備と開示の質の向上を通じて、実効性ある経営戦略へと落とし込むことが求められる。企業が自然との関係をどのように再定義するのか。その姿勢が、サスティナビリティ経済へ移行を左右することになるだろう。

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(原文)Media Release: IPBES Business and Biodiversity Assessment

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