欧州証券市場庁、新たなサステナブル・ファイナンス・ロードマップを公表。グリーンウォッシングへ対応

欧州証券市場庁、新たなサステナブル・ファイナンス・ロードマップを公表。グリーンウォッシングへ対応

2月11日、欧州連合(EU)の市場規制機関である欧州証券市場庁(ESMA)は、新しい「サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」を発表した。本ロードマップは、今後3年間で急速に台頭・発展するサステナブル・ファイナンス市場に対応するための優先行動分野と実施事項を定めたものだ。

世界の主要経済国が低炭素で持続可能な経済への移行を目指す中、大規模な資本の流れや投資を促進・支援するために、金融市場が大きな役割を果たすようになっている。サステナブル・ファイナンス市場が急速に成長・進化している中で、規制当局は、投資家を保護し、市場の安定性を維持するという役割を果たす必要がある。

規制当局にとって重要な課題の1つは、ESMAの新しいロードマップの最優先分野でもあるグリーンウォッシングのリスクへの対処だ。グリーンウォッシングとは、発行体や金融商品の持続可能性プロファイルに関する主張が誤解を招いたり、誤って伝えられる状況を指す。ESMAは、グリーンウォッシングは意図的に行われることもあれば、規制の違いやデータの質の低さの結果として意図せずに行われることもあると指摘している。 新しいロードマップは、グリーンウォッシングについて調査し、定義を明確にし、対処し、EU全体で共通の解決策を見出す手助けをするためのESMAの戦略を示している。

新ロードマップのその他の最優先分野には、ESMAおよび各国の所轄官庁(NCA)の持続可能な金融に関する能力の構築、およびESG市場とリスクの監視、評価、分析が含まれている。ここでの取り組みには、ESMAとNCAのスタッフを対象としたサステナブルファイナンスのトレーニングプログラムの制定、気候シナリオ分析とストレステストの開発、共通のリスク分析手法の強化などを含む。

ロードマップでは、SFDRの開示要件の見直しやESG投資商品の設計に関する要件の実施、発行体の持続可能性報告基準の策定への貢献から、ESG評価の比較可能性と信頼性の向上や炭素市場のモニタリングまで、主要な優先事項への対応を目的とした幅広い行動分野を設定している。

【参照ページ】
(原文)Sustainable Finance Roadmap 2022-2024

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る