生物多様性COP17を振り返る 2030年目標達成に懸念、主要成果と企業への影響

2026年10月19日から31日、アルメニアの首都エレバンで生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)が開催された。会議では、2030年目標に向けた初のグローバルレビューが行われ、各国の取り組みを加速する「エレバン・パスウェイ」が採択された。また、資金動員や生物多様性に有害な補助金の改革に加え、ネイチャークレジットなど民間資金の活用に関する動きも見られた。一定の成果があったものの、2030年目標の達成に向けた具体的な進展は十分とはいえず、各国による実施の加速に引き続き求められる。
2026年に国連環境計画(UNEP)などが公表したRestoration Progress Reportによると、過去50年間、世界の生態系は前例のない速度で劣化している。2022年、各国は国連の生物多様性条約の下で歴史的な合意を結び、地球上の陸域と水域の30%を保全することや、野生生物の減少を引き起こす産業の改革など、23の目標に取り組むことで、生物多様性の損失を反転させると約束した。今回の会議は、各国がこれらの約束の達成期限とする2030年までの折り返し地点にあたる。
COP17の主要成果
1. 政府間交渉における主な合意事項と成果
COP17では、2030年目標の達成に向けた進捗評価と、その実施を加速するための方針が議論された。主な成果は以下のとおり。
| 話題 | 主な内容 |
|---|---|
| エレバン・パスウェイの採択 | 初のグローバルレビューを踏まえ、2030年目標の達成に向けた実施加速の方針を採択。 |
| 生物多様性保全への資金動員 | 会期中に官民を合わせ約20億ドルの新たな資金拠出・投資が表明された。また、Cali Fundへの企業の自主拠出に関する仕組みを再確認した。 |
| 生物多様性に有害な補助金の改革 | 有害な補助金・インセンティブの改革を優先課題に位置づけた。会期中には改革を支援する国際的な自主協力も始まった。 |
今回の合意は、新たな目標を設定するものではなく、既存の2030年目標の実施を加速するためのものである。会期中には、生物多様性の保全・回復に向けて約20億ドルの新たな資金拠出・投資が表明されるなど一定の進展があったが、2030年目標の達成に必要な資金の確保は依然として課題である。
2. COP17前後に発表された企業・金融機関の取り組み
政府間交渉とは別に、COP17の会期中やその直前には、企業の自然関連対応に関わる新たな取り組みも発表された。
| 話題 | 主な内容 |
|---|---|
| ネイチャークレジット | EUなどが「Friends of Credits for Nature and Biodiversity」を立ち上げ。日本も参加し、自然保全・回復への民間投資を促進する国際協力を進める。 |
| Nature Action 100 | 機関投資家主導のイニシアチブが100社の自然関連対応を評価。日本企業5社も対象となった。 |
| TNFD・Nature Positive Initiative | COP17直前に、自然関連の評価・情報開示ガイダンスや、自然の状態を測定する共通指標を公表した。 |
これらは企業に直接的な法的義務を課すものではない。しかし、自然関連の情報開示や投資家による企業評価、自然保全への民間投稿は仕組みが具体化しつつあることを示している。特にネイチャークレジットは、新たな資金調達手段としての発展が注目される。
2030年目標の達成に懸念、国際報道の評価は
COP17の成果に対し、海外メディアからは慎重な評価が相次いだ。米紙ニューヨーク・タイムズは、各国がコミットメントを再確認したものの、2030年目標の達成に向けた進捗は依然として不十分であり、資金面の重要課題も未解決だと報じた。一方、WWFは、グローバルレビューや資金動員に関する合意を一定の前進として評価している。
特に、途上国の生物多様性保全に必要な資金の確保は大きな課題として残った。また、遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)を利用する企業から資金を集めるCali Fundも、自主拠出に依存しており、十分な資金を集められていない。
企業の生物多様性対応への影響は?
COP17によって企業に新たな規制や義務が直接導入されたわけではない。しかし、今後、各国が2030年目標の達成に向けて政策を具体化する過程で、企業活動にも影響が及ぶ可能性がある。
また、ネイチャークレジットなどの民間資金動員の仕組みや、TNFDなどの自然関連情報開示の取り組みも進展している。企業にとっては、規制動向だけでなく、投資家からの期待や自然保全に関する新たな市場の動きを把握することも重要になる。
COP17は一定の成果を残したものの、2030年目標の達成に向けた課題は依然として大きい。次回COP18(2028年、エクアドル)に向けて、各国の政策の具体化と民間セクターの取り組みがどこまで進むかが問われる。
参考:COP17: Nations chart ‘Yerevan Pathway’ to speed up action for nature UN Biodiversity Conference charts Yerevan Pathway to accelerate global action for nature 【COP17現地報告】生物多様性条約COP17閉幕 総括 ~2030年に向けて

