ISSBの自然関連開示案、TNFDと何が違う? 実務指針案を6つのQ&Aで解説

10月22日、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、自然関連リスク・機会の開示に関する「IFRSサステナビリティ開示実務指針(プラクティスステートメント)第1号(自然関連開示)」の公開草案を公表した。
今回の提案では、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言や指標が活用されている。また、IFRS S1・S2を適用する企業が自然関連情報をどのように開示するかについて具体的な要求事項が示されている。
本稿では、TNFDによる開示に取り組んできた企業にとって実務指針(プラクティスステートメント)の位置付け、LEAPアプローチの扱い、重要性の判断、シナリオ分析など対応の方向性についてQ&A形式にて整理・解説する。
※本記事は、2026年10月22日時点の情報に基づいて作成しており、今後の動向に応じて随時更新する予定である。なお、本記事で解説する内容はISSBが公表した公開草案に基づくものであり、確定した要求事項ではない。意見募集は2027年2月19日まで実施され、その結果を踏まえて、開示要求事項や公表形式が変更される可能性がある。
Q1. ISSBの自然関連開示は新たに義務化されるのか?
今回提案された実務指針案は、独立した開示基準ではなくIFRS S1・S2を補完する独立した文書として自然関連開示の要求事項を提案するもの。
一方、IFRS S1ではすでに「企業の見通しに影響すると合理的に見込まれるサステナビリティ関連リスク・機会」について、重要性のある情報の開示が求められており、他のリスクと同様に自然関連リスク・機会も含まれる。
「実務指針」を適用しないとしても、企業にとって自然関連リスク・機会が重要であると判断されれば開示する必要があるとしており、企業による実務指針への準拠自体は任意である。(IFRS S1・S2への準拠を表明することにおいて今回の実務指針案の適用は必須ではない。ただし、各法域が実務指針の適用を義務付ける可能性がある。また、実務指針への準拠を表明する場合は、ISSB基準と実務指針の要求事項を満たす必要がある。)
Q2. TNFDとISSBの自然関連開示の違いは? 既存のTNFD開示は活用できる?
ISSBの実務指針案は、TNFDの枠組みを活用しながら、IFRS S1・S2に基づく自然関連開示を具体化するものである。
ISSBは、TNFDの提言、指標、追加ガイダンスを参照して草案を策定した。TNFDに基づいて自然関連リスク・機会の評価や開示に取り組んできた企業は、実務指針への対応を進めやすいと言えるだろう。
特に、TNFDの開示指標は、IFRS S1の目的に適合し、ISSB基準や実務指針と矛盾しない範囲で、参照・検討することが認められる(Exposure Draft—Snapshot)。また、TNFDのLEAPアプローチも、自然関連リスク・機会の識別に利用できる。
ただし、TNFDによる既存の開示が、そのまま実務指針のすべての要求事項を満たすことを意味するわけではない。今回の草案では、所在地に関する情報、自然関連シナリオ分析、資産・事業活動の金額・割合などについて、具体的な要求事項が提案されている。
次に、実務指針で求められる開示事項の詳細を見ていく。
Q3. 実務指針では、具体的に何を開示するのか?
IFRS S1と同じ「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標」の4つの柱に沿って、自然関連リスク・機会に関する開示を具体化することが提案されている。
✓ バリューチェーン全体の所在地を開示する必要があるのか?
✓ 自然関連シナリオ分析は必須なのか?
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<執筆者>

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

