GHGプロトコルとISOの統合で、企業の排出量算定がどう変わるか

2026年7月、GHGプロトコルは、コーポレート基準(2004年)とスコープ2・スコープ3の各基準を、国際標準化機構(ISO)のISO 14064-1と統合する計画を公表した。公開草案の意見募集は27年第2四半期、統合規格の公表は28年第4四半期を予定する。気候関連開示に用いる排出量の算定ルールは、統合される予定だ。
これを受けて、「これまで積み上げてきたインベントリを算定し直すことになるのか」「スコープ1・2・3の算定方法そのものが変わるのか」「いつから新しい基準を参照すればよいのか」といった疑問を抱く場合もあるだろう。統合作業は28年までの予定であり、現状ではそれまでの間に何がどこまで変わるのか、まだ具体的に示されていない状態だ。
本稿では、今回の統合において両機関が何を目指しているかをおさらいしつつ、実務上の課題になりうる「疑問6点」を共有する。また、今後の統合に向けて理解を深める対応するために押さえておくべきポイントも整理する。
GHGプロトコルとISOの統合の流れ
ISO 14064シリーズは、各国の法令や規制に組み込まれ、GHGプロトコルは企業の算定実務と開示基準の参照先として使われてきた。こでまでは、公的規制と民間実務が別々の基準で動いてきたが、両機関はこの状態を解消するため、以下のとおり統合を目指している。
| 時期 | 内容 |
| 2025年9月 | ISOとGHGプロトコルがパートナーシップを発表。排出量算定の共通言語を整えること、製品カーボンフットプリントの共同基準を開発することの2点を掲げた |
| 2025年11月 | COP30(ブラジル・ベレン)で、議長国が両機関を炭素会計基準の調和を主導する実施パートナーに指名。2028年での最終化を目指し算定の基盤を整える |
| 2026年7月 | GHGプロトコルが企業レベルの統合計画を公表。コーポレート基準(2004年)、スコープ2基準(2015年)、スコープ3基準(2011年)、および開発中のActions and Market Instruments(AMI)基準を、ISO 14064-1と統合する |
GHGプロトコルとISOの統合による実務上の課題とは
GHGプロトコルとISOの統合により、現在の気候関連開示やGHG削減目標の設定にどのような影響があるのか、疑問を持つ実務担当者もいるだろう。特に、SSBJによる開示やSBT認定はGHGプロトコルとの関係が深く、現在の算定や開示の方法を今後見直す必要があるのかは気になるところだ。
GHGプロトコルとISOが公開しているFAQおよび規格開発計画をもとに、日本企業の実務担当者に関係が深い以下の疑問について、現時点で示されている考え方を整理する。(説明は規格策定途中の時点のもので公開されている情報に基づいており、確定した事項ではない。最新の内容は各機関の公式発表を確認されたい。)
・ISSBやSBTiとの整合
・インベントリを算定の再設計
・算定方法の変化
・新基準はいつ公表され、移行はどう進むか
・製品レベルでのカーボンフットプリントの扱い
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続きでは、日本企業の担当者にも関わりの深い6件のQ&Aと、統合基準の公表前に企業が着手できる3つの対応を整理しています。
・ISSB・SBTiとの整合、インベントリの作り直しの要否などについて両機関に寄せられたQ&Aの一部まとめ
・公表を待たずに進められる3つの対応
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GHGプロトコルス・コープ2の改定について詳しい解説はこちら>>>GHGプロトコルスコープ2の改定案を解説:決定版の公開までに企業が備えるべきものは? – ESG Journal
https://esgjournaljapan.com/column/50869
<執筆者>

マルティネス リリアナ(ESGJournalスペシャリストライター)
サステナビリティ学修士。シンクタンクにて、海洋・大気環境分野を中心とした環境政策・制度検討支援(調査・分析)に従事。また、国際海事機関(IMO)における海洋環境関連条約の技術・政策議論にTechnical Advisorとして参画した経験を持つ。その後、 Big4 ファームにて、気候変動、ネイチャー課題を中心とした企業向けアドバイザリー業務に従事。現在は 非財務情報開示フレームワークからサステナビリティを巡る国際動向まで、企業実務の視点からオリジナル解説およびホワイトペーパーを執筆。

