
6月2日、ドイツのハンブルクで、官民の主要機関で構成される「ハンブルク持続可能性プラットフォーム(HSP)」は、投資拡大を阻んできた構造的障害の撤廃を目指す共同意思宣言に署名した。この機に、プラットフォームは名称を「SCALED(スケールド:持続可能な開発のための資本拡大)」へと改め、連携を一層強化し具体的な行動に移すことを確認した。
SCALEDには、ドイツ連邦経済協力開発省、カナダグローバル問題省、フランス欧州・外務省、英国外務・英連邦・開発省、デンマーク外務省、南アフリカ共和国財務省といった政府機関が参加。これに加えて、KfW開発銀行や、アリアンツ、AXA SA、ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)、チューリッヒ保険グループといった世界有数の民間機関投資家も名を連ねており、発足からわずか数ヶ月という短期間で、具体的な枠組み構築へと大きく前進した。
この新たな枠組みの核心として、SCALEDは持続可能な開発プロジェクトへの民間資本動員をより容易、迅速、かつ効率的に行うための専門会社を設立する準備を進めていることを明らかにした。新会社は2025年末の事業開始を予定しており、始動後は直ちに太陽光発電所のような環境負荷の低減に貢献するプロジェクトや、現地の起業家支援などを対象とした投資ビークル(投資手段)の組成に着手する計画だ。
市場全体のサービスプロバイダーとして機能するこの新会社は、共通の関心を持つ投資家同士を結びつけ、標準化されたファンドなどの金融ビークルを設定し、投資を実行するための適切な国内外の資産運用会社を選定する役割を担う。これにより、民間および公的投資家は、これまで複雑だった手続きを経ることなく、定型化されたパターンに従って簡便に投資を行うことが可能となり、新興国・途上国が抱える深刻な資金調達ギャップの解消に大きく貢献することが期待される。
今後の官民双方からの資金拠出次第ではあるものの、新会社は様々なセクターや地域において、数年以内に数十億米ドル規模の民間投資を促進し、持続可能な社会の実現に向けた具体的なインパクトを生み出すことを目指している。
この国際的な取り組みは、経済協力開発機構(OECD)と米州開発銀行(IDB)が知的パートナーとしてその専門知識を提供し、事務局機能はドイツ国際協力公社(GIZ)が担当する。官民が一体となったこのSCALEDの挑戦が、地球規模の課題解決に向けた資金の流れを大きく変革する試金石となるか、国際社会の期待が集まっている。
(原文)Closing in on a breakthrough to mobilize sustainable private investment in emerging markets and developing economies
(日本語参考訳)新興市場および途上国経済への持続可能な民間投資を動員する突破口に迫る