
5月22日、欧州委員会が提案する「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」の簡素化案を支持する決議を可決した。この改革は、特に中小企業(SMEs)や少量輸入者にとっての行政負担を軽減することを目的としたもので、同時にCBAMの環境的野心は維持されるとしている。
可決された改正案では、新たに「50トン」という最低輸入量基準(de minimis threshold)が導入される見込みだ。これにより、CBAM対象品目(鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料など)を少量のみ輸入する90%の輸入者が同制度の適用対象から除外される。主に中小企業や個人事業者が恩恵を受ける形となる。
一方で、輸入によるCO₂排出量の99%は引き続き規制対象に含まれるため、制度全体の環境的効果は維持されると議会は説明する。改正案には、申告者の認可手続きの簡略化、排出量計算方法の見直し、CBAMにおける財務責任の管理改善、そして不正防止の強化なども盛り込まれた。
この提案は、欧州委員会が2025年2月に発表した簡素化パッケージ「Omnibus I」の一環であり、欧州連合(EU)域内の制度運用をより効率的かつ明確にすることを目的としている。
今回の修正案は、賛成564票、反対20票、棄権12票という圧倒的多数で可決された。今後は欧州理事会との最終交渉が行われ、制度の法制化が進められる見通しだ。
なお、CBAMはEU排出量取引制度(ETS)と連携して導入される制度であり、域外からの輸入品に対しても同等の炭素コストを課すことで、EU内外の競争条件を公平に保ちつつ、気候変動対策の国際的拡大を狙っている。欧州委員会は2026年初頭にCBAMの対象分野を拡大する可能性について再評価を行う予定だ。
(原文)Parliament supports proposals to simplify EU carbon leakage instrument
(日本語参考訳)欧州議会、EUの炭素リーケージ制度簡素化案を支持