ERMとPersefoni、気候変動開示のフレームワークの収束と差異を明らかにする調査結果を発表

ERMと気候管理・会計プラットフォームのPersefoni(ペルセフォーニ)がサステナビリティ研究所から発表した新しい調査によると、この1年間で、気候関連開示の主要なフレームワークの間で「実質的な収束」が見られたが、報告要件には依然として大きな違いがあることが明らかになった。

本調査「サステナビリティ情報開示の進化」では、米国証券取引委員会(SEC)、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)、IFRSの国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)が今年発表した規則案と開発中のフレームワークを調査・比較している。

報告書では、各フレームワークの類似点と相違点を検討するためのレンズとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)フレームワークの推奨事項の活用が重要であるとされている。

各フレームワークは、TCFDの提言に大きく影響を受けているが、指標の追加や提言からの逸脱といった分野での相違は存在する。各フレームワークの最も大きな違いは、スコープ3排出量、つまり、サプライヤーから発生する排出量や、顧客の製品の使用・廃棄による排出量など、企業の直接的な経営管理が及ばない排出量についての要求事項である。EFRAGとISSBの提案は、企業の気候変動報告書にスコープ3を含めるというTCFDの要求事項に従っているが、SECの規則案は、スコープ3の排出量が重要であるか、企業がスコープ3を含む排出量削減目標を表明している場合にのみ、企業に報告することを求めている。

また、SECの提案は、リスク管理や戦略の分野でもTCFDから乖離している。TCFDは、気候変動に関連するリスクと機会両方の開示を求めているが、SECは、リスクに関する報告のみを求め、気候変動に関連する機会の開示は任意としている。同様に、EFRAGとISSBは、物理的及び移行期の気候リスクを特定するためにシナリオ分析を要求するTCFDのガイドラインに従っているが、SECの提案ではそうなっていない。

もう一つの大きな違いは、ダブルマテリアリティの扱いである。これは、サステナビリティの問題が企業の業績や財務状況にどのように影響するかだけでなく、企業自身の影響についても開示することを求めるものである。EFRAGの提案は、二重の重要性の原則に基づいているが、SECの規則案は、投資家をリスクから守ることに主眼を置いており、二重の重要性に基づく開示は要求していない。

【参照ページ】
(原文)The Evolution of Sustainability Disclosure: Comparing the 2022 SEC, ESRS, and ISSB Proposals
(日本語訳)サステナビリティ情報開示の進化。2022年SEC、ESRS、ISSBの提案の比較

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