世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量をネット・ゼロにすることを目標に、可能な限り早期に旅行部門の脱炭素化を図るためのガイドラインと提言をまとめた新しい報告書「A Net Zero Roadmap For Travel & Tourism」を発表した。WTTCは、旅行・観光産業とその関連産業を代表する世界的な組織。
ロードマップは、国連環境計画(UNEP)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、アクセンチュアと共同で作成されたもので、主に宿泊施設、ツアーオペレーター、航空、クルーズ、オンライン旅行会社(OTA)や旅行代理店(TA)などの民間セクターの関係者を対象としている。
WTTCによると、旅行・観光業セクターは、気候変動が世界中の観光地に影響を与えるため、大きな影響を受けるが、同時に世界のGHG排出量の8〜10%を占めると推定されている。WTTCは、旅行・観光業が気候変動対策において重要な役割を担っており、ロードマップに示されているように、より高い目標と差別化された脱炭素化アプローチが必要である。
ロードマップでは、脱炭素コリドーを用いた新たな目標フレームワークを提示し、旅行・観光業を、その排出プロファイルとGHG排出量削減の難易度に応じて3つのクラスターに分類している。ロードマップには、宿泊施設、ツアーオペレーター、航空会社、クルーズ、オンライン旅行代理店(OTA)やメタサーチエンジンなどの観光仲介業を含む5つの主要産業の脱炭素化レバ-が含まれている。
WTTCでは、企業への提言として、個人やセクターの目標を達成するためのベースラインや排出量目標の設定、進捗状況の定期的なモニタリングと報告、業界内や政府間の協力、移行に必要な資金や投資の提供、気候変動に関する意識の向上と知識・能力の構築などを挙げている。
ロードマップでは、世界のリーダーたちに、旅行・観光業が他のセクターと同じレベルの支援を受けることを呼びかけ、パンデミック前には世界のGDP(9.2兆米ドル)の10.4%を占めていた旅行・観光業が、気候変動の課題に取り組み、ネット・ゼロの未来を実現するという目標を達成するために、どのような支援ができるかについて政府に提言している。
【参照ページ】
(原文)WTTC launches groundbreaking Net Zero Roadmap for Travel & Tourism
(日本語訳)WTTC、旅行・観光産業の脱炭素化ロードマップを発表