Shell、「LNG Outlook 2023」を発表 欧州のLNG需要が新規供給競争を促進し、長期的に貿易を支配

 

2月16日、エネルギー大手英Shellは「LNG Outlook 2023」を発表した。

英国を含む欧州諸国の2022年のLNG(液化天然ガス)輸入量は1億2,100万トンで、2021年比で60%増加し、ロシアのウクライナ侵攻に伴うパイプラインガス輸入の低迷に耐えることができた。 欧州諸国は十分なガスを確保できた背景には、中国の輸入量が1,500万トン減少し、南アジアの買い手の輸入量も減少したことがある。欧州のLNGに対する需要は急速に高まり、価格は過去最高となり、世界のエネルギー市場に変動をもたらした。

ロシアのパイプラインガスが減少する中、LNGは欧州のエネルギー安全保障の柱として重要性を増しており、北西ヨーロッパでの新たな再ガス化ターミナルの急速な開発にも支えられている。一方、中国は、急速に成長する輸入市場から、世界のLNG市場のバランスを取る能力を高め、より柔軟な役割を果たすように進化している。

ロシアのパイプラインガス流量が減少したことで、欧州各国政府はエネルギー安全保障を強化し、LNG輸入の優先順位や新しい輸入ターミナルの早期開発など、自国経済を高コストから守ろうとする前例のない政策や規制への介入を行った。

2022年、欧州のLNG需要は、他の購入者に輸入量の削減と他の燃料への転換を迫り、より多くの排出量を発生させることになった。世界的なLNG価格の高騰により、南アジアではLNGの輸入が減少し、パキスタンとバングラデシュは電力供給不足を最小限に抑えるために重油の輸入を増やし、インドは石炭の利用を増やした。

LNGの世界貿易総量は2022年に3億9,700万トンに達した。業界の予測では、LNGの需要は2040年までに年間6億5,000万トンから7億トン超に達するとされている。2020年代後半に出現すると予想される需給ギャップを回避するため、液化プロジェクトに対するさらなる投資が必要である。

ガスやLNGのサプライチェーンからの排出を削減する多様な新技術は、エネルギー転換におけるLNGの役割を確固たるものにするのに役立つ。また、再生可能天然ガス、合成天然ガス、水素、アンモニアを含む脱炭素ガスの開発・普及に業界の注目が高まっており、将来的にはより持続可能なエネルギー安全保障を実現することができる。

【参照ページ】
European LNG demand to drive competition for new supply and dominate trade in the long term

関連記事

おすすめ記事

  1. 【最新】TISFDとは?概要・指標から国内外基準との関連まで徹底解説

    2025-9-11

    【最新】TISFDとは?概要・指標から国内外基準との関連まで徹底解説

    気候変動や自然資本など、環境領域に関する開示が進みつつある中、次なるテーマは「社会」の領域。TIS…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…

ピックアップ記事

  1. 2025-10-29

    イベントレポート サステナビリティ経営フォーラム2025

    『本質に迫る対話とデータ活用 ~信頼を築く情報開示と戦略の再構築~』 ESG Journal…
  2. 【2026年本格適用】CBAM(炭素国境調整メカニズム)への実務対応ガイド

    2025-10-27

    【2026年本格適用】CBAM(炭素国境調整メカニズム)への実務対応ガイド

    2026年1月からEUでは炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment…
  3. 2025-10-27

    GRIとCDP、環境報告の共通化へ―新マッピングでデータ活用を促進

    10月21日、国際的なサステナビリティ報告基準を策定するGlobal Reporting Init…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る