米大統領、ESG・DEI重視を「政治的」と批判、SECやFTCに見直し指示

12月11日、トランプ米大統領は株主総会での議決権行使を助言するプロキシ・アドバイザー(議決権助言会社)への規制を強化する大統領令に署名した。外国資本が所有する大手助言会社が、ESG(環境・社会・ガバナンス)やDEI(多様性・公平性・包摂性)といった「政治的議題」を推進し、米国投資家の利益を損なっていると批判している。
大統領令では、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラス・ルイスの2社が、議決権助言市場の9割超を支配し、米国の大企業の経営方針や取締役選任、役員報酬などに大きな影響力を持っていると指摘した。両社が人種的公平性監査や温室効果ガス削減を求める株主提案を支持してきたことなどを問題視している。
命令に基づき、証券取引委員会(SEC)委員長は、議決権助言会社や株主提案に関する既存の規則やガイダンスを全面的に見直し、必要に応じて改廃を検討する。特にESGやDEIに関連する規定について、投資家利益との整合性を精査するよう求めた。また、助言内容に虚偽や重要な欠落があった場合の不正行為規制の厳格な適用や、投資助言業者としての登録義務の検討、手法や利益相反に関する透明性向上も指示した。
さらに、連邦取引委員会(FTC)には、議決権助言会社による反競争的行為や虚偽・誤解を招く慣行の有無について調査するよう命じた。年金や退職口座など個人投資家の資産価値を不当に損なっていないかを検証する。
労働省にも、企業年金制度に適用される受託者責任の基準を見直し、議決権助言会社が加入者の経済的利益のみを最優先して行動しているかを点検するよう求めた。ESGやDEIを考慮した議決権行使やエンゲージメントの透明性向上も検討対象とする。
今回の大統領令は、米国で進むESG投資や株主アクティビズムに対し、「投資判断は金銭的利益を最優先すべきだ」とする政権の姿勢を明確にしたものだ。今後、SECやFTCによる規則改正や調査が、資本市場や企業統治の実務にどのような影響を与えるかが注目される。
(原文)PROTECTING AMERICAN INVESTORS FROM FOREIGN OWNED AND POLITICALLY-MOTIVATED PROXY ADVISORS
(日本語参考訳)外国所有および政治的動機を持つ代理アドバイザーからアメリカの投資家を保護する

