11月4日、国連開発計画(UNDP)は新しい報告書を発表した。本報告書によると「緑の革命」によってもたらされる機会を認識できない国々は、提案されているネット・ゼロへの移行が適切に管理されない場合、社会的不平等、市民不安、経済競争力の低下のリスクを負うことになるという。
各国が持続可能な経済へと移行する際、そのプロセスが公正かつ衡平な方法で行われることが極めて重要であり、パリ協定の世界的な気候変動目標を達成するためには、「ジャスト・トランジション(公正な移行)」という考え方が鍵となる。
本報告書「Just Transition Can Deliver the Paris Agreement」は、「Nationally Determined Contributions(NDC)」と呼ばれる短期気候変動誓約の強化と、各国がネット・ゼロへの計画を記述する長期戦略の両方を分析している。本報告書は、ジャスト・トランジション(公正な移行)をリードする5カ国で用いられているアプローチを紹介している。また、公正な移行がパリ協定の実現に貢献する5つの重要な方法を特定している。
2022年10月31日時点で強化されたNDCを提出している170カ国のうち、65カ国(38%)が単なる移行に明示的に言及している。先進国と途上国の割合はほぼ互角で(51%対49%)、中・東欧がリードし、米州・カリブ海諸国、アフリカがそれに続く。アジア太平洋地域とアラブ諸国は遅れている。 しかし、NDCの中で単なる移行に関する専用の章や節を設けている国は11カ国(17%)に過ぎない。
また、2022年10月31日時点で提出された52の長期戦略(LTS)のうち、29(56%)が公正な移行について明示的に言及しており、そのうち17は欧州・中央アジアの国、次いでアジア太平洋地域、アメリカス・カリブ海地域の国である。短期計画よりはましとはいえ、LTSの中で公正な移行に関する専用の章またはセクションを設けている国は16カ国(55%)に過ぎない。励みとなるのは、強化されたNDCの中で公正な移行に言及しているほとんどの国が、公正な移行を社会経済的な考慮事項と関連付け(72%)、および/または具体的なジャスト・トランジション(公正な移行)の行動や手段を提案していることである(66%)。
本報告書では、各国が短期または長期の気候変動計画において、持続可能な開発目標(SDGs)やジェンダー平等との関連付けを怠っており、これは大きな機会損失であると指摘している。ジャスト・トランジション(公正な移行)に言及している国のうち、現在、NDCとLTSにおいて、公正な移行を持続可能な開発目標に関連付ける国はそれぞれ6カ国と4カ国だけであり、NDCとLTSにおいて公正な移行のジェンダーへの影響に言及する国はそれぞれ10と7つだけである。
本報告書によれば、公正な移行についてはエネルギー部門が最も注目されているが、最大の開発利益をもたらすためには、経済全体、社会全体の包括的なアプローチ、すなわちすべての部門に対応し、あらゆる方面からの賛同を確保することが必要である。
UNDPは、NDCとLTSに公正な移行を組み込むためのUNDPのフレームワークを用いて、34か国が公正な移行の原則、プロセス、実践を強化するのを支援している。この支援は、評価、関与、制度的政策と能力開発、資金という4つの分野で具体化され、公正な移行の原則に対する各国の認識を高め、公正な移行プロセスへの関与能力を強化し、公正な移行実践のための能力を開発することを目指している。
【参照ページ】
(原文)Social and economic benefits of a global ‘green revolution’ at risk, according to UNDP report
(日本語訳)UNDP、新報告書を発表 気候変動達成に向けたジャスト・トランジションの重要性を主張