10月27日、英通信衛星大手InmarsatとGlobantは独立研究レポート「Can Space Help Save The Planet?」を発表した。本レポートよると、衛星技術はすでに毎年15億トン(または1.5ギガトン)の炭素排出を削減している。これは、2021年の英国全体の年間排出量の約4倍、または5,000万台の自動車の生涯排出量に相当する。
本レポートでは、ネット・ゼロに向けた競争における宇宙技術の可能性を示すため、①輸送・物流②農業・林業・その他の土地利用③エネルギーシステムという3つの産業分野に焦点を当てている。これらを合わせると、世界の排出量の約60%を占めることになる。
衛星技術がこれらの産業で普遍的に採用された場合、現在衛星技術によって実現されているCO2削減量は、現在の技術だけでほぼ4倍の年間55億トンに達する可能性があるとGlobantは分析している。これは、2030年までに地球の気温上昇を1.5℃以下に抑えるために必要な炭素排出量の6分の1、あるいは2℃以下の気温上昇を抑えるために必要な排出量の3分の1に相当し、宇宙技術が世界が直面する最大の課題にプラスの影響を与える可能性を示している。
本調査に基づき、Globantの計算では、世界は現在、衛星技術の脱炭素化能力を活用することなく、最大40億トンの潜在的かつ即時のCO2削減を逃していることが示唆されている。これらの技術は、輸送における燃料消費の節約と経路の改善、エネルギー使用の削減と最適化、さらには林業における火災防止など、多くのことを可能にする。
また、本レポートによると、2021年の世界の排出量のほぼ4分の1(23%)に相当する88億トンの炭素排出量、または18億人の1人当たりの排出量は、今後数年間に出現する、または出現する予定の新進の宇宙対応技術が広く採用されることで節約できることが分かっている。
海上輸送では、自律型船舶が燃料消費量を削減することで、4億トンを節約できる可能性がある。エネルギー分野では、エネルギー転換のためのAIによるエネルギー最適化により、13億トンのCO2を削減できる可能性がある。航空分野では、欧州宇宙機関のIris技術が航空業界全体に採用されれば、1億トンのCO2を削減できる可能性があり、最初の航空機は2023年初頭に飛行が予定されている。
【参照ページ】
(原文)Space technologies offer opportunity to achieve one-sixth of emissions cuts needed to reach net zero by 2050
(日本語訳)英通信衛星大手Inmarsat、宇宙技術によるネット・ゼロに関するレポートを発表