ESRS簡素化が公表、EFRAGがナレッジハブ公開で実務支援を強化

12月4日、EFRAG は ESRS(欧州持続可能性報告基準 European Sustainability Reporting Standards)の簡素化案(Simplified ESRS)も公表した。これは、2月のオムニバス法案を提出と整合する形で、7月~9月にパブリックコメントを募集の上、技術的なコンサルテーションをまとめた(※ESRSの実質的な簡素化案の公表)ものであり、CSRD簡素化の適用に向けた一環のプロセスである。
2023年公表(オムニバス法案前)からの主な変更点は以下のとおりである。
ESRS簡素化案の主な変更点
- データポイントの大幅削減
- ダブル・マテリアリティ評価の文書化要件を簡略化
- 最初に開示すべき基礎情報(Core Disclosures)の明確化
- 中小企業向け規格(VSME)との整合性を強化
- 一部項目に段階的移行措置を設定
- 気候関連の主要開示は維持しつつ実務負荷を軽減
なお、公表された簡素案の詳細は以下の解説記事で説明しているので参考されたい。
関連する解説記事>>>ESRS変更ポイント公表:簡素化・ダブルマテリアリティの柔軟化を解説(2025年版)
オムニバス法案の提出により、CSRD対応において企業が抱える負担増大への懸念、各国当局における監督体制やガイダンス整備が追いついていないこと、さらにはサプライチェーン全体でのデータ収集の困難さが浮き彫りになり、ESRSの簡素化も進められている。特に、企業側からは段階的導入や必須項目の明確化を求める声が広がっており、EFRAG はこうした課題に応える形で基準を大幅削減している。
今後のスケジュールとして、欧州委員会が2026年前半に今回の簡素化案の最終化作業を進め、正式採択を経て、適用開始は2026年末頃と思われる。さらに 2027年以降は、追加ガイダンスの整備や中小企業向け対応の強化、必要に応じた基準レビューが継続的に行われる予定である。こうした動きにより、ESRS は制度目的と実務性のバランスを取りながら運用され、企業が計画的に開示対応を進めやすい枠組みに移行していくと考えられる。
なお、EFRAG はサステナビリティ報告の統合情報プラットフォーム「ESRS Knowledge Hub」(英語のみ)を正式に公開している。無料会員登録により、過去の会議資料、ドラフト、議論経緯などを網羅的に閲覧できるので、基準策定の背景理解に活用できるだろう。
(原文)EFRAG unveils Draft Simplified ESRS: A European Milestone for Sustainability Reporting ESRS Knowledge Hub

