
9月24日、英国の金融大手バークレイズは気候テクノロジー企業UNDO(本社・ロンドン)と、大気中の二酸化炭素(CO₂)を恒久的に除去する契約を結んだと発表した。UNDOが開発する「強化岩石風化(Enhanced Rock Weathering=ERW)」技術を用い、6,538トンのCO₂を削減する計画。英国企業によるERWの取引としては過去最大規模となる。
UNDOはカナダ・オンタリオ州の農地約1万エーカーに、細かく砕いたケイ酸塩岩を散布する。この岩石が雨水や土壌中のCO₂と反応することで炭酸水素塩が形成され、炭素が長期間固定される仕組みだ。あわせて土壌が豊かになり、農業生産の向上にもつながるという。
バークレイズは「自社のスコープ1・2排出量をすでに95%削減した。恒久的な炭素除去に投資することでネットゼロ戦略を補完する」(サステナブル・トランジションファイナンス部門責任者ダニエル・ハンナ氏)とコメントしている。
強化岩石風化は、地球の自然な岩石風化作用を人工的に加速させることで大気中のCO₂を吸収・固定する技術。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界的に大規模導入すれば年間最大40億トンのCO₂を除去できる可能性がある。
UNDOは2022年設立。英ブリティッシュ・エアウェイズや米マイクロソフトなどと提携し、将来的には年間数百万トン規模の岩石散布を目指す。2025年4月には、世界的な環境賞「XPRIZE Carbon Removal」で受賞企業の一つに選ばれた。
今回の契約は、炭素市場向けに保険サービスを提供するCFC社の引き受けにより実施される。保険を活用することでプロジェクトの信頼性が高まり、金融機関や投資家からの資金調達が容易になる。
UNDOのジム・マン最高経営責任者(CEO)は「バークレイズの支援は、私たちが迅速に事業拡大できるという強い信頼の表れだ。これにより土壌の健全化や作物の生産性向上など、農業にも多くの恩恵をもたらす」と述べた。
バークレイズは2018年以降、省エネ化や再生可能電力の導入などで自社の温室効果ガス排出量を大幅に削減しており、脱炭素関連事業や気候テクノロジー分野への投資を強化している。今回の取り組みは、金融・科学・農業が協力して炭素除去を進める新たなモデルとなりそうだ。
(原文)Barclays Backs UNDO in Landmark Carbon Removal Deal
(日本語参考訳)バークレイズ、画期的な炭素除去契約でUNDOを支持