米環境保護庁、EV規制の根拠見直しへ

7月29日、米環境保護庁(EPA)は、2009年に発表された温室効果ガス(GHG)が公衆の健康や福祉に悪影響を及ぼすとした「エンデンジャーメント・ファインディング(Endangerment Finding)」を撤回する提案を発表した。これにより、過去15年にわたり施行されてきたGHG排出規制の根拠が失われ、バイデン政権によるEV導入義務化なども撤回される可能性がある。EPAはこの措置により、年間540億ドル超のコスト削減が見込めると試算している。

EPAのゼルディン長官は「本提案は、自動車業界および消費者に対する16年間の不確実性に終止符を打つものだ」と述べ、温室効果ガス規制が本来の法的根拠を欠いていたと主張した。さらに、エンデンジャーメント・ファインディングは科学的根拠に欠け、政権の都合によって運用されてきたと批判した。今回の提案は、2025年に発表された気候に関する新たな科学的知見や、近年の連邦最高裁判決(West Virginia v. EPA)を踏まえたものであり、今後のGHG規制の法的正当性にも大きく影響するとみられる。

提案が最終決定されれば、2010年以降に導入された軽・中・重量級車両のGHG規制がすべて撤回され、自動車に搭載されているストップ・スタート機能などの義務付けも不要となる。EPAは近く、パブリックコメントの受付を開始する予定である。

本提案は、トランプ政権による「エネルギー主権の回復」と「規制緩和」を軸とする政策の一環であり、州政府への権限委譲や自動車産業の競争力回復を狙ったものとなっている。

(原文)EPA Releases Proposal to Rescind Obama-Era Endangerment Finding, Regulations that Paved the Way for Electric Vehicle Mandates
(日本語参考訳)EPA、オバマ政権時代の危険性判定と電気自動車の義務化を促した規制を撤回する提案を発表

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