
6月11日、ドイツの核融合スタートアップ「プロキシマ・フュージョン」は、シリーズAラウンドで1億3000万ユーロ(約221億円)の資金調達を実施したと発表した。欧州の民間企業による核融合分野の資金調達としては過去最大規模となる。同社は調達資金を活用し、2030年代に世界初となる「ステラレータ方式」の商用核融合発電所の建設を目指す。
今回の資金調達は、欧州のベンチャーキャピタルであるチェリー・ベンチャーズとボールドートン・キャピタルが主導した。これにより、公的資金を含めたプロキシマの調達総額は1億8500万ユーロ(約340億円)を超える。
プロキシマ・フュージョンは、ドイツが誇る世界有数の研究機関、マックス・プランク・プラズマ物理学研究所(IPP)から2023年に独立した。IPPが運営する先進的な実験装置「ヴェンデルシュタイン7-X」の成果を基に、商用化を急ぐ。
同社が採用するステラレータ方式は、複雑な形状の磁場で高温のプラズマを安定的に閉じ込める技術。競合するトカマク方式に比べて連続運転がしやすく、次世代のクリーンエネルギー源として期待されている。
フランチェスコ・ショルティーノ最高経営責任者(CEO)は「核融合は、世界のエネルギー依存を天然資源から技術的リーダーシップへと転換する戦略的な好機だ」と述べ、欧州の技術力を結集して開発を加速させる考えを強調した。
クリーンで無尽蔵なエネルギー源とされる核融合発電を巡っては、世界的に開発競争が激化している。欧州連合(EU)や各国政府もエネルギー安全保障の切り札と位置づけており、プロキシマの取り組みは、研究で先行してきた欧州が実用化でも主導権を握るための試金石となる。
同社は今後、高温超伝導(HTS)技術を使った主要部品を2027年までに完成させ、31年には実証炉「Alpha」の運転を開始する計画。純エネルギー利得(投入エネルギーを上回るエネルギーを生成すること)を実証し、商用炉の実現に道筋をつける。
(原文)Proxima Fusion raises €130M Series A to build world’s first stellarator-based fusion power plant in the 2030s
(日本語参考訳)プロキシマ・フュージョンは、2030年代に世界初のステラレーター方式の核融合発電所を建設するため、シリーズAラウンドで€130Mの資金調達を実施しました。