7月21日、環境省は、気候変動影響による台風激甚化のシミュレーション結果を発表した。環境省では2020年度より、将来の気候変動影響を踏まえた適応策の実施に役立てるため、近年大きな被害をもたらした台風について、地球温暖化が進行した世界で同様の気象現象が発生した場合、どのような影響がもたらされるか評価する事業を実施している。
今回、2019年台風第19号に加え、2018年台風第21号を対象とし、地球温暖化が進行した世界で同様の台風が襲来した場合の中心気圧や雨量、風速などの変化、洪水や高潮への影響についてスーパーコンピュータを用いたシミュレーションを実施した。
2019年台風第19号の状況に関しては、現在よりも中心気圧が低下して、より強い勢力を保ったまま日本に接近し、関東・東北地方により多くの雨をもたらすとの結果が出た。浸水被害が発生する地域がさらに広がり、浸水経験の少ない地域においても洪水が発生する可能性が高まることが示された。
洪水への影響に関しても分析を行った。東日本台風による被害が大きかった8荒川、多摩川、利根川、千曲川(信濃川)、那珂川、久慈川、阿武隈川、鳴瀬川(吉田川)を対象とし、各水系の基準地点について、その上流域に降った雨(流域平均降水量)と河川災害リスクを見る一つの指標であるピーク流量(最大流量)を算出した。2℃上昇シナリオでは、平均して10%(3%〜16%)、4℃上昇シナリオでは、平均して23%(14%〜34%)増加する結果となった。4℃上昇シナリオでは、特に影響を受けた8水系のうち、5水系で長期的な河川整備の目標である河川整備基本方針の流量を上回る予測となった。
2018年台風21号位関しても、現在よりも中心気圧が低下して、より強い勢力を保ったまま日本に接近するとの結果だった。2℃上昇シナリオでは最大風速が平均8.6m/s増加、4℃シナリオでは最大風速が平均10.2m/s増加する結果となり、高潮のリスクがさらに高まることが示された。
高潮への影響についても言及しており、大阪湾の潮位が、2℃上昇シナリオでは平均27.5%、4℃上昇シナリオでは平均23.0%上昇する結果となった。
今後、2018年に西日本を中心に大きな被害をもたらした豪雨を対象に、同様の手法を活用した評価を実施するとともに、社会経済分野に関する影響評価手法の調査・検討を行う予定である。