【最新】ESRS変更ポイント公表:簡素化・ダブルマテリアリティの柔軟化を解説(2025年版)

11月24日、EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)の部会会合において、ESRS(European Sustainability Reporting Standards)の改訂案となる ESRSの変更点のドラフトが公表された。本ドラフトは、2023年に採択済みのESRSを対象に、簡素化・明確化・他基準(特にIFRS S2)との整合を目的として再構成されたものである。
ただし、現時点では正式改訂版ではないものの、CSRD適用企業が今後どのような開示が求められるか、先取りして把握できる資料である。本稿では、EFRAGが公開したサマリーを基に、改訂案の要点を整理し、求められる実務ポイントについて解説する。
ESRS改訂の全体像:大幅な簡素化と構造再設計
改訂の方向性は、大きく 「開示負担の大幅軽減」「運用の柔軟性向上」の2つである。開示項目の数も以下のとおり削減方針が提示されている。
- shall 要件:803件 → 320件(▲60%)
- may 要件:270件 → 0件(完全削除)
- データポイント総数:1073件 → 320件(▲70%)
この削減幅は、ESRSが「過度に複雑で実務負荷が大きい」という批判に対する明確な回答になっているものの、データポイント総数300件を超えているので適切な管理が求められる。
ダブルマテリアリティの変更ポイント
ダブルマテリアリティ(重要性評価)について、評価方法と報告粒度を柔軟に扱えるようにする変更が示された。
経営判断による“トピック単位”の重要性判断
地理的条件の考慮が新たに明記されつつも、企業は 「何が重要トピックか」 を経営判断に基づいて選択できる。
年次での全面再評価は不要
ダブルマテリアリティは、毎年ゼロベースで評価し直す必要はなく、状況変化があった場合に見直せば良いとされた。
トピックの一部が重要と判断されれば、全体を開示しなくてよい
開示範囲を特定することが可能になる。たとえば、大気汚染のトピックのうちNOxのみが重要と判断されれば、NOxの対応や指標について開示することができる。
マテリアリティ評価の結果重要でないトピックは、項目が“必須”であっても開示不要
必須の開示項目をすべて開示する必要はなく、説明できれば非開示とすることもできる。
報告対象(子会社・グループ会社など)の変更ポイント
報告対象(連結境界)に関して次のような考え方が示された。
- マテリアリティ評価の結果、グループ全体に重要な影響がある領域のみ報告対象とする
- バリューチェーンに関しては、特にリース契約において、貸し手・借り手のGHG排出責任の所在を明確化する意図が示された。 (Scope3 の重複・漏れを防止する狙い)
ここからは、実務において重要となる “救済措置” や “サステナビリティ課題(E/S/Gトピック)別の項目の変更について説明していく。
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執筆者紹介
![]() | 竹内 愛子 (ESG Journal 専属ライター) 大手会計事務所にてサステナビリティ推進や統合報告書作成にかかわるアドバイザリー業務に従事を経て、WEBディレクションや企画・サステナビリティ関連記事の執筆に転身。アジアの国際関係学に関する修士号を取得、タイタマサート大学留学。専門はアジア地域での持続可能な発展に関する開発経済学。 |


