
9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示―」を発表し、LEAPアプローチによる自然資本分析を公開した。また、気候変動・自然資本双方のリスク・機会に関してシナリオごとに財務分析・評価されており、踏み込んで詳しく分析・開示した報告書になっている。
同社は従来、2019年にTCFD賛同、2020年から国内CVS事業(コンビニエンスストア事業)等でシナリオ分析を実施してきたが、今回の報告書では、国内外のCVS事業および関連サプライチェーン全体を対象に、「脱炭素シナリオ(1.5〜2℃上昇)」と「温暖化進行シナリオ(2.7〜4℃上昇)」の2シナリオを設定。短期(0~5 年)、中期(5~10 年)、長期(10~30 年)の時間軸にて財務インパクトの試算などを公開している。
なお、2030年における炭素税の負担は、国内・海外のCSV事業を合わせて約277億円と試算されている。一方、自然災害や原材料価格上昇についても別途数十億円規模の影響が見込まれている。
自然資本の分析では、LEAPアプローチを用いてコーヒー豆と米の自然への依存・影響を調達地ごとに評価。コーヒー豆についてはブラジル、コロンビア、グアテマラなど13カ国の優先調達地を特定し、生態的に脆弱な地域での森林伐採・水リスク・先住民族の土地環境問題なども含めた依存・影響を可視化。米については対象範囲の拡大と同様の評価が進められている。
対応策としては、再生可能エネルギーの調達拡大、省エネ設備の導入、新設した「セブン&アイ・エナジーマネジメント」を通じた再エネ供給の強化、災害時の情報共有システム「セブン VIEW」による店舗被害の早期把握と対応などが挙げられている。また、原材料価格変動への備えとして、産地分散やお取引先との協力強化も明記されている。
さらに、ガバナンス体制では、取締役会の監督の下、サステナビリティ委員会・環境部会などを設け、非財務指標(CO₂削減など)を役員報酬と連動させてモチベーション構築を図っている。
この報告書は、同社の気候変動・自然資本対応の“見える化”を一段深める内容であり、投資家とのコミュニケーションやステークホルダーとの協働にも有用な指針となるだろう。