
7月、コンサルティング大手のデロイトは、世界約20カ国、約2万人の意識調査「サステナビリティ・シグナル」の最新結果を発表した。調査によると、大多数の人が気候変動を「人類が引き起こした緊急事態」と捉えており、その意識が個人の消費行動や金融投資、さらには転職といったキャリア選択にまで大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。
調査結果によると、回答者の大多数が一貫して、「気候変動は人為的な原因によるものだ」と信じている。特に、近年多発する猛暑や豪雨といった異常気象を実際に経験した人ほど、危機感を強く抱く傾向が見られた。また、若年層(18~34歳)は気候変動に対し、怒りや悲しみといった強い感情を抱きやすいことも示された。
個人の生活における具体的な変化も顕著だ。回答者の約半数が「将来の移住先を決める際に気候変動を考慮する」と答え、約11%がすでに気候変動を理由に移住したか、計画していると回答した。持続可能性を意識した製品の購入意欲は高いものの、価格の高さが購買の障壁となっている実態も浮き彫りになった。金融面では、約3分の1が自身の投資先や利用する銀行を選ぶ際に、「持続可能性」を基準のひとつとしている。
職場環境においても、持続可能性への意識は従業員のエンゲージメントを左右する重要な要素となっている。自社の気候変動対策が「十分だ」と考える従業員の割合は、2021年9月の45%から2025年3月には38%に減少。全世界で約4分の1の従業員が「よりサステナブルな企業への転職を検討したことがある」と回答しており、企業の姿勢が採用・定着戦略に影響を及ぼし始めている。
デロイトは本調査を年2回実施しており、環境問題に対する人々の意識と行動の変化を継続的に追跡している。今回の結果は、企業が持続可能性への取り組みを強化することが、消費者や従業員から選ばれるための重要な経営課題であることを改めて示している。