GX/GX-ETSと実務への影響~企業が取り組むべき脱炭素戦略

GX/GX-ETSと実務への影響~企業が取り組むべき脱炭素戦略

※本記事は、2025年3月に発行した記事に最新のGX-ETSの実務ポイントに関する内容を追記・更新し再掲載している。(2025年7月・12月)

GX(グリーントランスフォーメーション)は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた日本政府の戦略的取り組みであり、企業の競争力強化や新産業創出の鍵となるだろう。エネルギー安全保障の確保や国際市場での競争力維持が求められる中、GXリーグ、成長志向型カーボンプライシング、GX経済移行債といった具体策が進められてきた。本記事では、GXの背景に加えて、政策の詳細、企業の対応策を解説し、GX-ETSの実務ポイントを整理する。

|GXとは

GX(グリーントランスフォーメーション)は、日本政府が推進する脱炭素化に向けた経済・社会全体の変革の枠組みである。エネルギー供給の多様化や省エネルギー技術の普及、再生可能エネルギーの拡大を通じて、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す。GX-ETSでは、対象企業に対して温室効果ガス排出量の報告および移行計画の提出が求められ、2026年度以降は排出枠の取引が本格的に制度化された。(GX-ETSは改正GX推進法に基づく「法定制度」として位置付けられ義務化された。※2025年12月更新)

排出実績については「限定的保証」の取得が求められつつあり、事実上の義務的対応要素が制度に組み込まれつつある点にも留意が必要である。(2025年7月更新)


|GXが求められる背景

GXは、気候変動への対応だけでなく、国際競争力やエネルギー安全保障、ESG投資の拡大への対応としても重要な国家戦略である。CBAMやIRAなど国際的な脱炭素政策の進展を踏まえ、日本企業にも構造転換が求められている。なお、GXは単なる環境対応にとどまらず、新産業の創出や資金調達にも直結する政策領域である。

|GX-ETSとは

(2025年7月更新)

GX-ETS(グリーントランスフォーメーション・エミッション取引制度)は、GXリーグを基盤に日本政府が設計した全国規模の排出量取引制度であり、GX推進法に基づいて段階的な制度化が進められている。企業の自主的な参加による実証的取組からスタートしたが、2026年度以降は本格的な制度運用(第2フェーズ)が開始する。

制度対象者については「直近3年間の平均で、エネルギー起源および非エネルギー起源の直接CO₂排出量が10万トン以上の事業者」を基本とする方向性が示されている。これにより、日本全体のCO₂排出量の約6割をカバーする設計が想定されている。また、対象企業は排出枠の割当申請、排出量の算定・報告、排出枠の保有義務の履行といった一連のルールに従うことが求められ、制度上も義務として整理されている。(※2025年12月更新)

報告内容には、移行計画の提出(対象:排出量が一定規模以上の企業)および排出実績に対する第三者保証(限定的保証)が含まれ、これらの提出先は経済産業大臣である。2025年度までは第1フェーズとして任意参加型が継続されるが、2033年度以降には排出枠の有償化(オークション制)が法制度上位置付けられており、制度の義務的要素は今後一層強化される見通しである。

排出目標を上回る削減実績を有する企業は「超過削減枠」として排出権の取引が可能であり、未達の場合には他社の超過削減枠やクレジット購入、または未達理由の説明が求められる。これにより、GX-ETSは企業間の排出量可視化と取引を通じ、温室効果ガス排出削減の市場メカニズム的促進を図る制度設計となっている。

以下、2025年12月に更新された産業構造審議会 排出量取引制度小委員会中間整理に基づき、GX-ETSの詳細についてどのような対応が必要になるか説明していく。


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執筆者紹介

ESG Journal 編集部
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