<新着>CSRD・CSDDDを大幅簡素化が承認、CSDDDは2029年7月から適用へ

対象企業を絞り、競争力強化へ 欧州議会が暫定合意を承認

12月16日、CSRD(企業のサステナビリティ報告)およびCSDDD(企業サステナビリティデューディリジェンス指令)に関する規則を見直すオムニバス法案の暫定合意を、EU加盟国との間で承認した。

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サステナビリティ報告義務は「従業員1,000人超・売上高4.5億ユーロ超」に限定

見直し後の規則では、平均従業員数が1,000人を超え、かつ年間純売上高が4億5,000万ユーロを超えるEU企業のみが、社会・環境に関するサステナビリティ報告を義務付けられる。
また、EU域内売上高が4億5,000万ユーロを超える非EU企業についても、EU域内で2億ユーロ超の売上を持つ子会社や支店を通じて適用対象となる。

報告要件は大幅に簡素化され、業種別基準は任意となる。さらに、従業員1,000人未満の中小企業に対して、大企業が過度な情報提供を求める「責任転嫁」を防ぐ仕組みも盛り込まれた。中小企業は、任意の報告基準に含まれる範囲を超える情報提供を求められない

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デューデリジェンス義務は「従業員5,000人超かつ年間純売上高15億ユーロ超」

人権や環境への悪影響を防止・軽減するためのデューデリジェンス義務については、さらに対象が絞り込まれる。義務を負うのは、従業員5,000人超かつ年間純売上高15億ユーロ超のEU大企業、および同水準のEU域内売上を持つ非EU企業に限定される。

対象企業は、自社の事業活動やバリューチェーンにおけるリスクを特定する必要があるが、従業員5,000人未満の取引先に情報提供を求めるのは、他の方法で十分な情報が得られない場合に限られる

また、「移行計画(トランジションプラン)」策定義務は撤廃されるが、規則違反があった場合、企業は各国レベルで責任を問われ、全世界売上高の最大3%の制裁金が科される可能性がある。

適用は2029年7月から

デューデリジェンス指令の適用開始時期は、2029年7月26日とされた。サステナビリティ報告・デューデリジェンス義務の適用延期に続く今回の見直しは、企業の準備期間を確保しつつ、制度全体の簡素化を進める狙いがある。

今後の手続き

本案は賛成428票、反対218票、棄権17票で可決された。今後、EU理事会による正式承認を経て、官報掲載から20日後に発効する予定。

今回のオムニバス法案の承認により、CSRDの適用対象から外れる企業は日本企業でも相当数に上るとみられ、「肩透かし」を感じる向きは多い。しかし、これまで進めてきたGHG算定やダブル・マテリアリティ評価、バリューチェーン把握は無駄ではないはずだ。いまこそ、規制対応から一歩進め、事業リスクや成長機会を可視化する経営判断の基盤として活用できるかが今後の分岐点となる。開示義務の有無に左右されず、戦略と意思決定に結び付ける視点への転換が求められるだろう。

(原文)Simplified sustainability reporting and due diligence rules for businesses

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