1月10日、国際労働機関(ILO)は、「世界雇用と社会の見通し:2024 年」(WESO Trends)を公表した。本報告書によれば、経済状況の悪化にもかかわらず、労働市場は驚くべき回復力を示しているが、新たな脆弱性と複数の危機がより大きな社会正義への展望を侵食しているため、パンデミックからの回復は依然として不均衡なままであると指摘されている。
本報告書では、失業率と雇用ギャップ率(就職を希望する無職者の数)の両方が、パンデミック以前のレベルを下回っている点を指摘した。2023年の世界の失業率は5.1%で、5.3%であった2022年から小幅に改善。世界の雇用格差と労働市場参加率も2023年には改善した。
一方、労働市場の見通しと世界の失業率はともに悪化すると予測。2024年にはさらに200万人の労働者が職を探すことになり、世界の失業率は2023年の5.1%から5.2%に上昇すると予想されている。可処分所得はG20諸国の大半で減少しており、一般的にインフレによる生活水準の低下は「すぐに補われる見込みはない」とした。
高所得国と低所得国とのギャップについても言及。2023年の雇用格差は、高所得国では8.2%であったが、低所得国では20.5%であった。同様に、2023年の失業率は高所得国では4.5%であったが、低所得国では5.7%であった。
さらに、就労貧困は持続する可能性が高いとし、2020年以降急速に減少しているにもかかわらず、極度の貧困に苦しむ労働者の数は2023年に約100万人増加、中程度の貧困に苦しむ労働者の数は2023年に840万人増加したと指摘した。
所得格差も拡大しており、実質可処分所得の減少は「総需要と持続的な景気回復にとって悪い兆候である」と警告している。非正規労働の割合は横ばいで、2024年には世界の労働人口の約58%を占めると予想されている。
【参照ページ】
(原文)Global unemployment rate set to increase in 2024 while growing social inequalities raise concerns, says ILO report
(日本語参考訳)ILO報告書、2024年世界の失業率で上昇予測。社会的不平等の拡大も懸念