12月14日、EU上院(EU理事会)とEU下院(欧州議会)は、電力市場設計(EMD)改革に関する一連のEU法改正案で政治的合意に達した。これには電力規則、電力指令、REMIT規則などが含まれており、今後は双方での立法手続に進む予定である。この改革の主な目的は、ウクライナ戦争後のガス価格上昇による電気料金の増加に対処し、2030年までに再生可能エネルギーの導入を3倍に増やすことである。

主なポイントとしては以下の通りである。

  1. 電力契約選択肢の拡大とダイナミックプライシング契約の導入
    • 消費者は契約を結ぶ前に明確な情報を得やすくなり、ダイナミックプライシング契約も選択できるようになる。
  2. 価格リスクの管理義務
    • 電力供給事業者は価格高騰や市場価格変動に対処するため、価格リスクを管理することが義務付けられる。
  3. エネルギーシェアリングの導入
    • 需要家は屋根上太陽光発電や風力発電の余剰電力を近隣の需要家とシェアすることができるようになる。
  4. エネルギー貧困への対策
    • 脆弱な消費者やエネルギー貧困層は電力の断絶から保護され、電力価格危機が宣言された場合、EUは保護措置を発動できる。
  5. 双方向型の差金決済契約(CfD)の義務化
    • 再生可能エネルギーおよび低炭素発電の新設に対する公的支援は、双方向型のCfDか同等のスキームを義務付けられる。
  6. 容量市場の改革
    • 認可された容量市場制度に例外規定が導入され、系統混雑に関する透明性が向上する。
  7. 予測可能なエネルギーコストの確保
    • 長期契約(PPA)の導入が促進され、EU加盟国はPPAに市場ベースの保証を確保する義務が生じる。
  8. エネルギー規制当局の強化
    • エネルギー規制当局は市場の整合性と透明性を監視する能力を強化し、市場濫用事例を調査できるようになる。

これらの措置により、再生可能エネルギーの導入を促進し、電力市場の透明性と競争力を高め、消費者と企業にとって予測可能なエネルギーコストを提供することが期待される。

【参照ページ】
(原文)Commission welcomes deal on electricity market reform

関連記事

“導入事例へのリンク"

おすすめ記事

  1. 2024-4-16

    SSBJ公開草案の重要ポイント解説:今後の気候変動の情報開示はどう動くか

    2024年3月29日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が国内のサステナビリティ開示基準の草案…
  2. 2024-4-9

    SBTN(Science-Based Targets for Nature)とは。企業のネイチャーポジティブ経営を実現する目標設定の方法論を解説。

    TNFDのフレームワークが公開され、先進企業ではフレームワークに基づく情報開示が進みつつある(20…
  3. 2024-4-2

    【さくっと読める】TNFDの開示とは。重要ポイントを抽出。

    2023年9月、TNFDのフレームワークが完成し公開された。2023年時点でTNFDに基づく開示を…

ピックアップ記事

  1. 2024-5-8

    IBM、ESGデータプラットフォームにCSRD対応機能を追加

    4月30日、IBMは、ESGデータの収集、分析、報告プ​​ラットフォーム「IBM Envizi」の…
  2. 2024-5-8

    IFRS、EFRAG、ISSB/CSRD報告基準に双方に対応する企業向けガイダンスを発行

    5月2日、IFRS財団と欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、ESRS-ISSB基準の相互に共…
  3. 2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
ページ上部へ戻る