9月20日、EYは持続可能なサプライチェーンがどのようにビジネスに変革を起こすのかを調査した新しい報告書を発表した。同社は、北米、中米、南米の大企業525社を対象に、小売、消費財、医療機器、ライフサイエンス、政府、テクノロジー、エネルギー、製造、モビリティ、食品・農業など、幅広い分野のサプライチェーン担当役員を対象に調査を実施し、本報告書を作成した。
本報告書では、サプライチェーンの上級管理職は、収益性の向上、顧客ロイヤルティ、従業員の生活の質の改善など、サステナビリティの取り組みからさまざまな利益を得ることを期待していることが明らかになった。
しかし、本調査では、多くの企業がサプライチェーンの発展をサポートするためのビジネスケースを欠いており、約半数がサステナビリティの進捗を測定し報告することに苦労していることがわかった。
本報告書は、企業が持続可能性への取り組みの焦点をサプライチェーンにまで拡大し、政府や規制当局が企業にバリューチェーンにおける人権や環境への悪影響を評価し対処するよう求める施策を導入する中、発行された。投資家、顧客、従業員からの圧力の高まりに加え、いくつかの新しい持続可能性開示制度により、企業はサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量から人権への影響に至るまで、様々な問題を測定し報告することが求められるようになる。
EYの調査では、サステナビリティの問題がますます注目される中、サプライチェーンの経営幹部にとって優先順位が高く、80%がESGの取り組みを重視していると報告している。しかし、サプライチェーンの持続可能性を向上させるための経営者の主な動機としては、規制遵守への対応やパートナーやサプライヤーからの圧力が挙げられる一方で、経済的な要因が上位を占め、61%が持続可能性の取り組みに着手する最大の動機としてコスト削減を挙げている。
同様に、ほぼ全員(99%)のエグゼクティブが、サプライチェーンのサステナビリティの取り組みによるメリットとして、収益の増加を挙げており、70%が今後1~3年以内にこのメリットをすでに実感している、または実感する見込みであると報告している。サステナビリティの取り組みによって経験または期待されるその他の効果としては、顧客ロイヤルティの向上(100%)、オペレーションリスクの管理向上(100%)、従業員の生活の質の向上(98%)、効率性と生産性の向上(100%)などが挙げられた。
経営陣は、サプライチェーンの持続可能性向上への関心と期待される効果を明確に示しているが、サプライチェーンの可視性の問題は、多くの企業にとって、取り組みや戦略の実施における大きな課題となっていることが報告されている。本調査では、グローバルなサプライチェーンの課題が、リスクをより適切に評価し、混乱に備えた計画を立てるために、今年、経営幹部にとって可視性が最優先事項となったが、可視性が向上したと答えた回答者はわずか37%に過ぎないことが明らかになった。
EYによると、可視性を高めるツールに投資することで、サプライチェーンの持続可能性への取り組みを向上させる企業の能力が向上する可能性が高い。現在、調査対象となった企業のうち、サプライチェーンの持続可能性とリスクに関する基本的なKPIを報告していると答えたのはわずか50%で、約半数が持続可能なサプライチェーン活動のリターンを測定するのに苦労していると報告している。また、回答者の3分の1は、自社が持続可能なサプライチェーンの発展を支援するためのビジネスケースがないと答え、約2割は持続可能性戦略がないと回答している。
本報告書では、「先駆者」として分類された回答者のうち、持続可能性への取り組みが進んでおり、より優れた可視性を提供するためのテクノロジーの導入で際立っている約10%の回答者に焦点を当てた。本グループは、他のグループと比較して、従業員の生活の質の向上、顧客ロイヤルティの向上、従業員の離職率の減少などの効果をすでに実感していることがわかった。他のグループと比較し、これらの先進的な企業は、サプライチェーンの持続可能性の主要な動機であるコスト削減を重視しておらず、88%が短期的に収益の増加を見込んでいるか、すでに経験しており、43%が1~3年以内に株価の上昇を見込んでいる。
【参照ページ】
(原文)How sustainable supply chains are driving business transformation
(日本語訳)EY、持続可能なサプライチェーンとビジネスの変革に関する報告書を発表