7月4日、欧州中央銀行(ECB)は、気候変動ストレステストの結果を発表した。銀行は気候変動リスクをリスク管理枠組みに組み込むことを早急に進める必要があること、また、銀行は依然として排出集約型産業へのエクスポージャーが大きいことを示した。
ECBは今年初め、気候リスクに起因する金融・経済ショックに対処するための銀行の準備態勢を評価する目的で、ストレステストを開始した。同調査では、104の参加銀行が提供した情報を検討し、各銀行の気候ストレステスト能力、および炭素排出部門への依存度を評価した。また、ECBは一部の銀行に対して、炭素価格の上昇や、洪水や猛暑などの物理的リスクなどを考慮したさまざまな移行シナリオの下で銀行のパフォーマンスに与える影響についての情報を求めた。
報告書によると、近年、銀行は気候変動リスクへの取り組みを進めてきたが、ほとんどの銀行には気候変動関連リスクを十分に測定・管理するうえで大きな課題が残っていた。調査対象となった銀行の60%近くは、ストレステストの枠組みに気候変動リスクへの配慮をまだ含めておらず、現在、融資を行う際に気候変動リスクを考慮しているのも5分の1に過ぎない。ECBは、銀行はストレステストの枠組みのガバナンス構造、データの利用可能性、モデル化手法の改善に取り組む必要があると述べた。
また、高排出産業へのエクスポージャーが大きいことから、銀行が長期的な気候変動戦略をより明確に定義する必要性も指摘された。ストレステストの結果によると、現在、銀行の非金融法人顧客からの収入の3分の2近くが、「温室効果ガス集約型」とされるセクターから得ており、EU経済におけるこれらの産業の相対的比重を大きく上回っている。
気候変動に関連するパフォーマンス・リスクの検討に関する調査には、41の銀行が参加した。銀行は、金融システムのグリーン化のための中央銀行・監督者ネットワーク(NGFS)が作成したシナリオに基づき、将来起こりうる気候政策を反映し、熱、干ばつ、洪水などの物理的リスク、炭素価格の上昇などグリーン経済への移行に起因する短期および長期リスクを評価するよう要請された。ストレステストでは、無秩序リスクと物理的リスクのシナリオの下で、銀行の潜在的な信用損失と市場損失が700億ユーロ(約9兆円)と確認された。一方、ECBは、気候の悪影響シナリオによる景気後退を予想しておらず、まだ十分なデータが組み込まれておらず、一部の銀行のみを調査したため、この金額は実際のリスクレベルを「著しく低く」していると指摘している。
【参照ページ】
(原文)ECB takes further steps to incorporate climate change into its monetary policy operations
(日本語訳)ECB、金融政策運営に気候変動を取り入れるためのさらなるステップを実施