【ESG 企業分析①】運用機関からの評価はNo.1!伊藤忠商事のESGへの取り組み
本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。
第1弾として、本日は伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠)の直近のESGに関する取り組みと統合報告書やIR開示内容を解説したいと思います。
伊藤忠について
総合商社。祖業の繊維をはじめ、食料など生活消費関連の割合が大きい。商社で初めてコンビニに参画、傘下にファミリーマート。2015年に中国CITICグループ、タイCPグループと戦略的業務資本提携を締結。
出所:SPEEDA
CSR/ESGにおける対外的評価
優れた統合報告書(GPIF調査):6運用機関が選定(No.1)
・例年通り、CEO メッセージが印象的な統合報告書で、コロナ禍における問題意識、サステナビリティの考え方がよくわかる内容。
出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」GPIF(2021/2/24)運用機関コメント
・上場子会社のガバナンス体制構築状況の報告、マクロ環境要因に注目した PEST 分析に基づく事業機会とリスクなど、非財務情報を資本に紐づけている点に新規性があり評価できる。
・総合商社にとって重要な投資意思プロセスのリスク管理が詳細に記述されており安心感のある内容。情報の網羅性が高いだけでなく、事業ごとに企業価値向上に向けた施策を論理的にまとめられている。
・2020 年 4 月にグループ企業理念を「三方よし」に改訂。財務・非財務のあらゆる分野に企業理念を密接に関連付け、独自の切り口で短期・中長期の成長に向けた道筋が明確に示されている。
総合:3位
出所:モーニングスター株式会社「Gomez ESGサイトランキング2020」
ESG共通:4位
GPIFの6運用機関から「優れた統合報告書」に選ばれた伊藤忠は単独最多得票でした。またサステナビリティ関連の開示・取り組みをまとめたサイトは非常に分かりやすく、MorningstarのESGサイトランキングでも総合3位につけています。
このように高い評価を受けている伊藤忠は、ESGに関してどのような開示をしているのでしょうか。次章以降は評価されている項目を具体的に見ていきたいと思います。
印象的なCEOメッセージ
まず何といってもCEOメッセージが力強く、今後の目指す姿が明確に伝わってきます。伊藤忠は2020年4月に企業理念を「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」に刷新しました。その背景に対する詳細な説明と、全てのステークホルダーに報いるという考え方に結果が伴っており、非常に安心感のある内容となっています。
またアフターコロナの世界では「稼ぐ、削る、防ぐ」という3項目により比重を追いてコツコツと刻む経営を行う、と述べており、現在の好調な業績に驕らない地に足のついたビジョンにも好感が持てます。
統合レポートの位置付けを明確化
統合報告書やサステイナビリティレポート等、ESGに関する開示は多岐にわたりますが、伊藤忠商事は統合レポートの前段にてそれぞれの位置付けを非常に分かりやすく整理しています。
統合レポートに記載のあるESG関連情報は①「自社の関与度・マテリアリティともに高い」もしくは②「自社の関与度が低いものの、マテリアリティが高い」という2点に絞って記載しており、必要な情報を整理した上で読み進めることができます。
出所:統合レポート2020(P.8)
財務・非財務のあらゆる分野に企業理念を紐付け
企業理念「三方よし」が企業価値や非財務資本、マテリアリティ、SDGsとどう結びついているかがあらゆる側面から分析されており、これまでよりも数倍分かりやすくかつ内容の濃い統合報告書になっています。
投資意思プロセスのリスク管理に関する開示
また商社としての事業投資プロセスも、ESGリスクの折り込みも含めてリスク管理全体が詳細に記述されている点も安心感がある、という評価を得ているようです。
最後に
伊藤忠商事のESGに関する取り組みと、対外的に評価を受けているポイントをまとめましたが、いかがでしたでしょうか。近年5大商社の中でも圧倒的な成長を見せ、株式市場からも評価を受けている伊藤忠商事ですが、ESGへの対応に関しても企業理念を刷新する所から始めており、こちらも他社対比群を抜いた対応を見せていると言えそうです。
今後も伊藤忠の快進撃が続くのか、彼らの動向に注目です。
次回は三井化学のESG開示分析です。お時間ある方は以下リンクよりご覧ください。
【ESG 企業分析②】ESGの独自KPI設定といったらこの企業!三井化学とESG
よろしくお願いします!
—————————-
日本最大級のESGメディアであるESG Journalを運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社では、本記事でまとめた企業に限らず、統合報告書を発行している主な日本企業100社ののESGに関する評価やIndexの組み入れ先、各種データの参照をまとめたESGコンプス(非財務類似企業比較)を無料で提供しています。
こちらを見ることで、今ESG開示において最も評価されている企業がどのような開示を行っているかを把握することが可能です!もしご興味がある方は、是非以下のリンクからダウンロードしてください!
【無料ダウンロード】 ESG開示に関する上場企業100社比較データ