大手航空連合、1億5000万ドルのSAF開発基金を発表

9月17日、米テキサス州フォートワースで、航空連合ワンワールドと加盟航空会社が、ビル・ゲイツが創設した投資会社ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)と共同で、新たな投資ファンド「oneworld BEV Fund」を立ち上げたと発表した。初回調達額は1億5000万ドルで、アメリカン航空とアラスカ航空が主導し、国際航空グループ(IAG)、キャセイパシフィック航空、日本航空、さらに非加盟のシンガポール航空も参加している。目的は持続可能な航空燃料(SAF)の研究開発と商業化の加速である。

SAFは従来のジェット燃料に比べて最大80%のライフサイクル排出削減が可能とされるが、供給不足と高コストが課題となっている。ファンドは次世代SAF技術への投資、代替燃料市場の拡大、サプライチェーンの多様化、地域経済や雇用への波及効果を目指す。

アメリカン航空ロバート・アイソムCEOは「顧客の需要と環境責任に応えつつ、航空産業の競争力を高める」と強調。アラスカ航空ベン・ミヌクッチCEOは「産業の長期的なエネルギー転換に向けた革新を支える」と述べた。キャセイグループのロナルド・ラムCEOは「アジアの役割は大きく、地域から勢いをリードしたい」と語り、日本航空の鳥取三津子社長は「島国の日本にとって航空の環境対応は使命だ」と表明した。シンガポール航空も「次世代SAFの開発を強力に支持する」としている。

世界の航空産業は現在、世界経済4.1兆ドル、雇用8650万人を支える一方、CO2排出の約2〜3%を占める。需要拡大が見込まれる中、SAF普及は不可欠であり、今回のファンド立上げは産業全体の変革を後押しするものとなる。

(原文)oneworld alliance, member airlines and Breakthrough Energy Ventures launch investment fund to advance and commercialize Sustainable Aviation Fuel technologies

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. ESGフロントライン:TCFD開示の再点検のすすめーーISSB基準・SSBJ基準時代の気候開示

    2025-9-26

    ESGフロントライン:TCFD開示の再点検のすすめーーISSB基準・SSBJ基準時代の気候開示

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースやトレンドを取り上げ、独自の視点で考察して…
  2. 2025-9-26

    カーボンクレジット市場の分断解消へ、CDOPが初の共通データモデルを発表 

    9月23日、ニューヨークで開催中の「クライメートウィークNYC(Climate Week NYC)…
  3. 2025-9-26

    EU、ポスト2030温室効果ガス削減目標で声明採択、2035年に最大72.5%減を視野

    9月18日、EU理事会は国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)への提出に向け、次期温室効果ガス削減…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る