ロールス・ロイス、独INERATECと提携 データセンターの非常用電源を合成燃料で脱炭素化

英技術大手ロールス・ロイスと、合成燃料(e-Fuel)製造を手がける独新興企業INERATEC(イナラテック)はデータセンターのバックアップ電源の脱炭素化に向けた戦略的パートナーシップを締結したと発表した。人工知能(AI)の普及でエネルギー消費が急増するデータセンターの非常用発電機に、再生可能エネルギー由来の合成燃料を導入し、気候変動への対応と電力の安定供給を両立させる。

AIの利用拡大に伴い、データセンターは最もエネルギー消費量の伸びが著しい分野の一つとなっている。同時に、重要インフラであるデータセンターは停電から保護される必要があり、信頼性の高い非常用電源が不可欠だ。

今回の提携では、ロールス・ロイスのパワーシステムズ事業部門が展開する「mtu」ブランドの非常用発電機に、INERATECが製造する合成ディーゼル燃料「e-Diesel」を使用する。この燃料は、再生可能エネルギー由来の水素と回収した二酸化炭素(CO₂)を原料とする「Power-to-X」技術で生産され、化石燃料由来のディーゼルを代替することで、バックアップ電源をカーボンニュートラルに運用できる。

ロールス・ロイス パワーシステムズの定置用電源ソリューション事業部門を率いるトビアス・オスターマイヤー氏は、「我々のmtu非常用発電機は、すでに持続可能な燃料での稼働が承認されている。INERATECと共に、二酸化炭素排出量の削減を目指すデータセンターでのe-Fuel利用を推進していく」と述べた。

INERATECの最高商務責任者、マクシミリアン・バックハウス氏も「AIを駆使するデータセンターへの安定したエネルギー供給は、現代の決定的な課題の一つだ。我々のe-Fuelは、気候に中立で、拡張性があり、即時導入可能なソリューションを提供する」とコメントした。

両社はまずドイツ国内のデータセンターを対象に市場投入を開始する。INERATECのフランクフルトの生産拠点から燃料を供給することで、迅速な展開を目指す。将来的には国際的な協力関係に発展させる計画だ。この取り組みは、デジタル化が進む世界で、e-Fuelの新たな活用事例を示すものとなる。

(原文)e-Fuels for climate-friendly data centers: Rolls-Royce and INERATEC launch partnership
(日本語参考訳)気候に優しいデータセンター向けe-Fuels:ロールスロイスとINERATECが提携を開始

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