
8月6日、英国の金融行動監視機構(FCA)は資産運用会社や生命保険会社などを対象とした気候関連情報開示規則の運用状況に関するレビュー結果を公表した。規則が企業の気候リスクへの意識向上に貢献したと評価する一方、開示内容が個人投資家には複雑すぎる点や、企業の報告負担が過重になっているなどの課題を指摘。今後は国際的な基準との整合性を図りつつ、報告フレームワークの簡素化を進める方針を示した。
FCAは2021年、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った情報開示を資産運用会社などに義務付けた。今回のレビューは、この規則の施行後の効果と課題を検証するもので、対象企業から抽出したTCFD報告書や業界団体との対話を通じて実施された。背景には、TCFDがその役割を終え、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準にその機能が引き継がれた世界的な潮流がある。
レビューの結果、規則によって企業が気候変動を重要なリスクとして捉え、戦略に統合するようになったとFCAは評価している。顧客への透明性も向上した。
しかし、複数の課題も明らかになった。特に、開示情報が機関投資家には有益である一方、個人投資家にとっては専門的で複雑すぎ、商品レベルの報告書へのアクセスも困難であるため、関心が低くなっていると指摘された。また、企業側からは、将来予測に関する定量的データの入手が難しいことや、複数のサステナビリティ開示制度への対応で報告が細かすぎ、負担が大きいとの声が上がった。
これらの結果を受け、FCAは今後の対応方針を示した。企業の不必要な負担を軽減し、開示要件を簡素化することを目指す。同時に、消費者の意思決定に役立つ質の高い情報を確保し、グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)を抑制する。また、英国政府が進めるISSB基準の国内版(英国サステナビリティ報告基準)の導入も見据え、国際的な整合性を推進し、持続可能な金融における英国の主導的地位を維持したい考えだ。
FCAは今後、業界関係者とさらに対話を進め、具体的な次の一手を検討するとしている。
(原文)Climate reporting by asset managers, life insurers and FCA-regulated pension providers
(日本語参考訳)資産運用会社、生命保険会社、FCA規制対象の年金提供者による気候関連報告