
7月21日、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省は同国の排出量取引制度(UK ETS)に、大気中の温室効果ガスを除去する技術(GGR)を統合する方針を正式に決定したと発表した。市場の安定性を最優先し、2028年末までの法制化、29年末の運用開始を目指す。これにより、企業の脱炭素化とCO2除去を一つの市場で効率的に促し、ネットゼロ目標の達成を加速させる狙いだ。
この決定は、今年5月から行われた公開協議の結果として発表された。協議には、ETS参加企業やGGR開発事業者、金融機関、環境団体など160以上の組織から意見が寄せられ、GGRの導入自体には幅広い支持が集まっていた。
監督局は、市場の混乱を避け、制度の信頼性を確保するため、以下の主要な方針を固めた。
- 総排出枠の維持: GGRによって「除去枠」が1トン創出されるごとに、市場に供給される通常の「排出枠」を1トン削減する。これにより、市場全体の枠の総量が変わらないため、炭素価格の暴落を防ぎ、企業が自ら排出を削減する意欲を維持する。
- 信頼性の高い除去活動: 除去枠は、実際にCO2が貯留され、検証された後にのみ発行される。また、貯留期間は最低200年と定め、万が一CO2が漏洩した場合は事業者が責任を負う仕組みを設ける。
- 排出枠との区別: GGR由来の「除去枠」は、既存の排出枠とは区別して取引される見通し。これにより、除去という付加価値に対する価格形成を促す。
- 対象は国内限定: 当面、除去枠の発行対象となるのは英国内で行われた除去活動のみとする。
一方で、森林によるCO2吸収については、貯留の永続性などに関する懸念から、今回の決定は見送られた。監督局は新たな証拠資料を公表し、関係者との対話を続けた上で、年内に改めて判断する方針を示している。
監督局は「これは英国における信頼性の高い除去枠のための、長期的で堅牢な市場を構築する上で重要な一歩だ」と位置づけており、今後、オークションの具体的な方法など、技術的な詳細を詰めるための協議を進める。
(原文)Integrating greenhouse gas removals in the UK Emissions Trading Scheme
(日本語参考訳)英国排出量取引制度における温室効果ガス除去の統合