
5月、BNPパリバの証券サービス部門は世界の機関投資家を対象としたESG(環境・社会・ガバナンス)投資に関する調査結果を発表した。調査によると、大半の投資家がESG投資への取り組みを継続する強い意欲を示す一方、一般的なESG投資から、より具体的なテーマへの投資へと軸足を移している実態が明らかになった。特にプライベートキャピタル(未公開株)の運用会社が、低炭素経済への移行を事業機会と捉え、関与を深めている。
今回で5回目となるBNPパリバの隔年調査「業界調査:道を切り拓く機関投資家」は、29カ国420社の資産所有者(アセットオーナー)、資産運用会社、プライベートキャピタルを対象に実施され、回答者の運用資産総額は、推定で33.8兆米ドルに上る。
本調査は、定量調査(2024年11月〜2025年1月)と定性インタビュー(2025年1月〜4月)を通じて実施された。調査の主な結果は以下の通りとなった。
ESG目標への揺るぎない姿勢
回答者の大多数(87%)がESGに関する目標に変更はないと回答。また84%が、2030年にかけて持続可能性への取り組みは「継続または加速する」と考えている。一方で、41%は自社の取り組みや成果に関する情報発信について、以前より慎重な姿勢を示している。
投資判断におけるESG重視は継続、テーマ型へ移行
回答者の85%が持続可能性に関連する基準を投資判断に組み込んでおり、そのうち59%が具体的なテーマに絞った「テーマ型投資」を実践している。今後2年間のESG関連の主要目標としては、「エネルギー転換資産への配分増加」(49%)、「自社のESG目標達成のための積極的な株主行動(アクティブ・オーナーシップ)」(47%)、「低炭素資産への投資と炭素集約型資産からの売却」(46%)が上位を占めた。
気候、生物多様性、社会への影響を重視する高度なアプローチ
先進的な投資家である「ペースセッター(先導者)」と分類された回答者(全体の19%)は、投資戦略において「ポートフォリオの脱炭素化」(95%)、「社会問題」(94%)、「公正な移行」(68%)、「生物多様性」(86%)といった、より具体的なテーマを重視する傾向が顕著だった。
プライベートキャピタルの台頭
プライベートキャピタルの運用会社の51%が、ESG目標達成のためにアクティブ・オーナーシップを活用すると回答。特に「社会問題」(76%)や「公正な移行」(63%)への関心が高い。多くがESG投資を付加価値の創出や低炭素経済への移行に伴う投資機会の獲得につながると考えている。
戦略的パートナーシップとデータ活用の重要性
投資家が外部の金融サービスパートナーを選ぶ際の最重要基準は「ESG・持続可能性に関するブランドの評判」(51%)だった。また、信頼性の高いESGデータを入手・分析するため、投資家の半数近く(48%)が「ESGデータの取得と分析」に関する予算を増やすと予測している。