米国企業の取締役会、ESGの統合を進めつつ成長戦略を優先 – 「What Directors Think 2025」調査

2月に取締役会教育プロバイダーのCorporate Board Member、GRCソリューションプロバイダーのDiligent、およびコンサルティング会社FTI Consultingが公開した、米国の公開企業の取締役を対象とした「What Directors Think 2025」調査によると、米国の公開企業の取締役会は、ESG関連の課題を引き続き重要視しながらも、その優先度が変化していることが明らかになった。
調査結果によると、サステナビリティは2025年の主要課題の中で相対的に順位を下げている。取締役の多くが、経済環境の改善や成長戦略の推進を最優先事項とし、ESGの課題を経営戦略の一環として統合する傾向にある。特に、エネルギー、資源、製造業の分野では、サステナビリティの取り組みをコスト最適化や業務効率化と結びつける動きが見られる。
一方、気候変動リスクやサプライチェーンの持続可能性に関しては、依然として取締役の間で関心が高い。特に国際展開を行う企業では、サステナビリティ関連の規制強化や地政学的リスクへの対応が求められており、79%の取締役がこれらを事業戦略上のリスクと認識している。ただし、具体的な対策として「地政学的リスク管理」を2025年の最優先課題とした取締役は10%未満であった。
また、ESG関連の株主からの圧力はやや低下傾向にある。取締役会の11%のみが「株主エンゲージメントとアクティビズム」を最優先課題として挙げており、過去数年と比べてもその関心は減少している。この背景には、市場環境の安定化により、株主アクティビズムの影響が相対的に弱まっていることがあると考えられる。
さらに、ESGの一環としてのAI活用についても言及されており、特に保険業界ではInsurTechの発展を背景に、ESGデータの分析やリスク評価にAIを導入する企業が増えている。一方で、取締役の33%が「経営陣のAIやテクノロジーに関する知識不足」を課題として挙げており、サステナビリティを含むデジタル戦略の強化が求められている。
総じて、2025年の取締役会の議題においてサステナビリティは引き続き重要な要素ではあるが、その優先度や焦点は変化しており、企業の成長戦略やリスク管理と統合される形で進化していると言える。
【参照ページ】
(原文)WHAT DIRECTORS THINK A Changing Risk Landscape
(日本語参考訳)取締役の見解 変化するリスク環境