
6月20日、国土交通省海事局は「将来の船舶需要予測検討タスクフォース」において、水素やアンモニア、CO2といったカーボンニュートラル実現に不可欠な新たなエネルギー・資源の輸送を担う貨物船の需要量を2050年までの長期視点で試算し、その中間とりまとめを公表した。脱炭素社会の実現を見据えて、国内造船業が持続的に成長するための政策設計や産業戦略に向けた基礎データとして活用される見込みだ。
国交省は、令和6年6月の「船舶産業の変革実現のための検討会」で、2030年までに「我が国海事産業が次世代船舶の受注量でトップシェアを確保する」という目標を掲げ、造船業の競争力強化に向けた議論を進めている。また、令和7年2月に決定された第7次エネルギー基本計画では、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて、国内外からの水素・アンモニアの安定供給と、CO2回収・貯留(CCS)などを含む新たな輸送需要の創出が不可欠とされた。今回の需要予測は、こうした政策方針に沿って、今後の船舶建造計画やサプライチェーン構築に直接影響するものとなる。
とりまとめによれば、液化水素、メチルシクロヘキサン(MCH)、液化アンモニアといった輸送キャリアにより異なるが最大270から940隻、アンモニア専用船では最大約110隻、液化CO₂運搬船では最大約180隻が新たに求められると試算された。これらは既存船の代替や更新を含め、2030年代後半から2040年代にかけて建造需要のピークを迎える見込みであり、従来のタンカーやバルカーに加え、燃料転換に対応した高度な設計・技術開発が不可欠となる。
国交省は今回の試算を基に、国内造船所が世界市場での競争力を維持・強化しつつ、新たな環境規制や需要に応えられるよう、造船業の成長ビジョンを今後策定する方針とした。加えて、世界の海上輸送需要全体を支えるための一般貨物船やコンテナ船などの需要についても、引き続き詳細な分析を進めるとしている。
(原文)我が国のカーボンニュートラルの実現に必要な貨物を輸送する船舶の需要を予測しました~「将来の船舶需要予測検討タスクフォース」の中間とりまとめ~