11月14日、InfluenceMapが公表した新しい調査によると、日本政府の目玉政策である「GX政策」は、気候変動に関する世界的な科学的権威である国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によるガイダンスとずれていることがわかった。本調査は、鉄鋼、電力、自動車業界団体に代表される日本の重工業セクターによる戦略的影響力が、政策に対する企業の関与を支配していたことを示している。
本調査では、IPCCのガイダンスから導き出された、世界の気温上昇を1.5℃目標に抑えるためのベンチマークを用いて、「科学的根拠に基づく政策」(SBP)との整合性を検証している。GX政策のうち、カーボンプライシングと化石燃料政策に関連する要素は、これらのベンチマークから特にずれている。
本調査によると、遅れていて不確実な価格設定システムとGXポリシーの石炭、LNG、水素・アンモニア混焼発電への依存は、IPCCの1.5℃推奨経路と矛盾し、長期的な世界排出目標にリスクをもたらす。さらに、GX政策はハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の継続販売を支持しており、低排出ガス電力で動くEVが支配的な役割を持たなければならないというIPCCのガイダンスに反している。
日本の産業界によるGX政策への関与の大部分(2022年1月から2023年6月までの間にInfluenceMapが収集した、日本企業30社と業界団体50社によるGX政策への企業の関与に関する約900件の公的証拠の81%)は、少数派である9業界団体と8企業から発信されている。
その中には、電力、鉄鋼、化石燃料生産、自動車生産を代表する業界団体が含まれる。日本の経済と雇用の70%を占めるその他の業界(金融、小売、建設、消費財、医療など)は、日本のGX政策の戦略的詳細についてほとんど沈黙を守っている。
GX基本方針は、2030年と2050年の排出削減目標を明示しているが、GX政策がこれらの目標にどのように貢献するのか、あるいは、GX政策が温暖化を1.5℃に抑えることとどのように整合するのかについては、明確に言及していない。
炭素サーチャージと排出権取引を組み合わせた成長志向型カーボンプライシングは、導入時期が遅く、価格水準も不明確である。IPCCによれば、2030年には1t-CO2あたり約170~290米ドル(約25,000~43,000円)の炭素価格が必要とされているが、成長志向型カーボンプライシングがこの価格水準を達成する可能性は低いと思われる。
本調査によると、GX政策の推進に最も積極的に関与したのは日本経済団体連合会(経団連)であった。調査対象となったGX政策に関する約900の企業関与データのうち、15%を占めている。意味のある炭素税に反対し、アンモニアの役割を強く主張していることは、SBPと特に不一致のある分野である。経団連の現会長である住友化学の十倉正和氏は、経団連の提案は現在のGX基本政策にほぼ全面的に採用されていると述べる。
【参照ページ】
(原文)New Study Finds Japan’s $1Tr GX (Green Transformation) Climate Plan Misaligned with IPCC Climate Science Pathways to 1.5°C
(日本語参考訳)InfluenceMap、日本のGX温暖化対策がIPCCの1.5℃への道筋とずれていることを示す新たな研究結果を公表