グーグル、海洋由来のCO₂除去で新たな一歩

エブ社と3,500トン除去の事前購入契約、淡水化施設活用で拡大狙う

12月10日、海洋を活用した二酸化炭素(CO₂)除去技術を開発する米スタートアップのエブ(Ebb)は米グーグルと大気中のCO₂を3,500トン除去する事前購入契約を締結したと発表した。海水淡水化施設という既存の産業インフラを活用する同社の手法に対し、大手テック企業が本格的な信頼を示した形だ。

エブは先月、世界最大の淡水化事業者であるサウジアラビア水庁(SWA)との提携を発表したばかり。今回のグーグルとの契約は、その流れを受けたもので、同社が掲げる「海洋炭素除去を大規模化するには、既存インフラの活用が不可欠」という戦略の有効性を裏付けるものといえる。

淡水化施設では、淡水を取り出した後に高濃度の塩分を含む「ブライン」と呼ばれる廃液が大量に発生する。世界全体では、その量は1日あたり1億トン以上にのぼるとされる。エブはこのブラインを活用し、CO₂除去に加えて淡水回収量の増加や、持続可能な工業用化学品の生産につなげる技術を開発している。

同社によれば、既存の淡水化設備に直接システムを組み込むことで、新規設備投資や運用の複雑さを抑えつつ、パートナー企業に経済的・運用上の利点をもたらすことが可能になるという。これにより、炭素除去コストの低減だけでなく、大規模展開が現実的になるとしている。

今回グーグルが購入する3,500トン分のCO₂除去は、サウジアラビア国内の施設で実施される予定だ。インフラと連携した炭素除去が、実際に測定可能で意味のある気候変動対策となり得ることを示す事例となる。

またエブは、グーグルの研究開発部門「X(ムーンショット・ファクトリー)」とも協力し、海洋アルカリ化プロセスの副産物として生じる酸の新たな活用方法を模索している。炭素除去にとどまらない付加価値創出の可能性が期待されている。

エブの共同創業者ベン・ターベル氏は、創業前に故マシュー・アイザマン博士とともにアルファベット社内で気候・炭素除去関連のプロジェクトに携わっていた。今回の契約について同氏は、グーグルが海洋ベースの気候ソリューションやインフラと整合した革新的技術を支援し続けている点に大きな意義があるとしており、今後の継続的な協力に期待を示している。

(原文)Accelerating our path to scalable ocean carbon removal with Google
(日本語参考訳)Google と共にスケーラブルな海洋炭素除去への道を加速

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