EU、EUDRの適用延期へ 企業の準備不足踏まえ簡素化協議入り

11月19日、欧州連合(EU)理事会は、森林破壊に関与しない製品の流通を義務付ける「森林破壊防止規則(EUDR)」の一部改正に向けた交渉 mandate を採択した。企業や各国当局から準備不足を指摘する声が相次いだことを踏まえ、規制の実施時期を後ろ倒ししつつ、手続きを簡素化するのが狙いだ。今後、欧州議会と最終合意を目指す。

EUDR は牛肉、コーヒー、カカオ、大豆、木材など主要農産物や関連製品がEU市場に流通する際、森林破壊に関与していないことを企業に証明させる制度として2023年に成立した。当初は24年12月に主要条項が適用される予定だったが、企業の準備が遅れたことなどから25年12月まで延期されていた。

今回、理事会はさらに1年の適用延期を支持し、すべての事業者について規制の適用開始を26年12月30日とする方針を示した。小規模・零細事業者については27年6月までの追加的な猶予期間を設ける。一方、欧州委員会が提案していた中・大規模企業向けの「猶予期間」は削除し、すべての事業者に統一的な延長を適用する形に改めた。

デューデリジェンス(適正確認)手続きも簡素化される。市場に初めて製品を投入する事業者のみが義務を担い、下流企業や仲介業者は独自の申告提出が不要となる。第一次生産者である零細企業は、一度だけ簡易的な申告を行えばよいとした。理事会は、行政負担を抑制しつつ、規制の目的を損なわない運用を目指す。

欧州委員会には26年4月までに簡素化の効果や中小企業への影響を検証するレビューを求める。必要に応じて追加的な立法提案も検討される。

理事会は本 mandate を基に、今後数週間以内に欧州議会との交渉に入る見通し。現行規制が25年12月に適用期限を迎えるため、それまでの合意が求められる。

EUDR は世界的な森林破壊抑制に向けたEUの中核政策とされるが、情報システムの整備遅延や、特に小規模事業者の負担増が課題として浮上していた。今回の見直しは、制度の実効性確保と負担軽減の両立を図る取り組みとなる。

(原文)Deforestation: Council ready to start talks with Parliament on a targeted revision of the regulation

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