欧州委員会、61件の脱炭素技術プロジェクト支援に29億ユーロ

11月3日、欧州委員会はEU排出権取引制度(EU ETS)の収益を原資とするイノベーション基金から、総額29億ユーロ(約4700億円)を61件のネットゼロ技術プロジェクトに投資すると発表した。エネルギー集約型産業や再生可能エネルギー、蓄電、脱炭素モビリティなど幅広い分野を対象とし、欧州の温室効果ガス削減と産業競争力の強化を狙う。

欧州委によると、今回選ばれたプロジェクトは18カ国・19産業分野に及び、今後10年間で2億2100万トンのCO2換算排出削減が見込まれる。これは欧州の乗用車約990万台分の年間排出量に相当するという。委員会は、これらの取り組みが2050年の気候中立達成に向けた重要な一歩になるとしている。

61件の採択事業者は、今後、欧州気候・インフラ・環境執行機関(CINEA)と助成契約の準備を進める。予算やスケジュール、法的責任などを確定し、2026年前半に正式契約が完了する見通しだ。

イノベーション基金は、EU ETS収益の約400億ユーロを投じ、低炭素・ネットゼロ技術の普及を支援する仕組み。今回の公募(IF24 Call)には359件の応募があり、要請額は計217億ユーロと募集額(24億ユーロ)の9倍に達した。委員会は、応募の多さが欧州の技術セクターの成長と脱炭素への意欲を示すものだと評価している。

選定は独立専門家が行い、温室効果ガス削減効果、革新性、プロジェクトの成熟度、再現性、コスト効率の観点から評価された。

気候・ネットゼロ・クリーン成長担当のウォプケ・フックストラ委員は声明で、「欧州は気候への野心を産業の現実に変えている。自国の技術に投資することで、エネルギーの強靭性を高め、質の高い雇用を創出し、欧州の競争力を維持する」と述べた。

欧州委は年内にも電気自動車用バッテリーセル製造や再生可能水素に関する助成契約を締結する予定で、次回のイノベーション基金公募は2025年12月初旬に始まる見通しだ。

(原文)Commission invests €2.9 billion from the Innovation Fund to boost net-zero technology projects
(日本語参考訳)欧州委員会は、ネットゼロ技術プロジェクトを促進するためにイノベーション基金から29億ユーロを投資する

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