
10月17日、国際海事機関(IMO)の加盟国は、海運業からの化石燃料利用を2050年までに段階的に廃止することを目指す「ネットゼロ枠組み(Net Zero Framework)」の採択を1年延期することを決定した。当初2028年から開始予定だった実施計画は後ろ倒しとなり、来週予定されていた第20回温室効果ガス作業部会(ISWG-GHG 20)での詳細な交渉も見送りとなる。今回の延期は、海運業におけるグローバルな脱炭素化の歩みにとって大きな後退とみられている。
この枠組みは、世界初の法的拘束力を持つグローバルなカーボンプラネットゼロ枠組みは、特定産業分野として世界初となる法的拘束力を持つ国際的な炭素価格制度の導入を柱とし、徴収した資金を公平に分配する基金の設立を含むものだった。また、燃料のライフサイクル全体(生産から供給、燃焼まで)の排出を考慮した国際的燃料基準(Global Fuel Standard)や、船舶運航のエネルギー効率を義務化する新規則も盛り込まれていた。採択延期により、これらの施策の議論と準備も1年先送りとなる。
環境保護基金(EDF)のグローバル海運・IMO代表ナタシャ・スタマティウは、「今回の延期は、2023年に合意されたIMO戦略のタイムラインを崩しかねない後退だ。各国が足並みを揃えなければ、技術革新は進まず、移行コストも増大する」とコメントした。同氏は、加盟国に対して早期の交渉再開と「公正で実効性あるエネルギー転換策」の実現を求めた。
EDFは、輸送分野全体で持続可能な開発とクリーンな空気・気候安定の両立を目指す活動を展開しており、IMOに科学的知見を提供する立場として各国政府および海運業界と連携している。今回の決定を受け、同団体は「公平で迅速な海運業の脱炭素化を実現するため、引き続き科学的根拠に基づく提言を行う」としている。
(原文)IMO Postpones Adoption of Net Zero Framework, Delaying Global Action to Decarbonize Shipping
(日本語参考訳)IMO、ネットゼロ枠組みの採択を延期、海運の脱炭素化に向けた世界的な取り組みを遅らせる
















