サステナビリティ投資、広がる経営戦略の中核に。デロイト調査

10月、デロイト・グローバルがまとめた「2025年C-suiteサステナビリティ・レポート」によると、27カ国・2,100人超の経営幹部のうち約45%が「気候変動やサステナビリティ対応」を来年に向けた課題として挙げた。割合はここ3年ほぼ変わらず、サステナビリティ経営の定着がうかがえる。世界の企業経営層の間で、サステナビリティが依然として最重要課題の一つに位置付けられていることが明らかになった。
調査によると、企業の約8割がサステナビリティを経営モデルに「組み込んだ」または「変革の柱に据えた」と回答した。投資も堅調に拡大しており、83%が前年度より増加。特にテクノロジー分野への支出が目立つ。AI(人工知能)の活用は前年から一段と進み、「既にAIを活用している」とする企業は全体の81%に達した。主な用途は業務効率化や排出量削減、データモニタリング、新製品開発などで、企業規模を問わず導入が広がっている。
一方で、サステナビリティ関連の取り組みにやや鈍化の兆しも見られる。経営幹部の報酬を環境目標に連動させる施策は前年の43%から36%に低下。再生可能エネルギーの導入やサプライヤーへの基準設定といった取り組みも数ポイント減少した。背景には、短期的な経済環境の変動や、優先すべき投資領域の見直しがあるとみられる。
デロイトはこうした動きを、単なる後退ではなく「成熟段階への移行」と分析する。これまでの「見える化」や「再エネ導入」といった初期段階の施策から、企業戦略や事業モデルにサステナビリティを本格的に組み込む動きに転じつつあるという。
課題としては、効果測定の難しさを挙げる企業が多く、コスト要因よりも「環境影響の測定に関する課題」や「投資家からの短期成果要求」が障害になっていると答えた割合が高い。デロイトは、政策・規制環境の変化やAI・データ活用の進展に対応しつつ、「経済的価値と環境価値を両立させる戦略の再構築が求められている」と指摘している。
報告書では、テクノロジー導入、サステナブル素材の利用、新たな環境対応製品の開発、業務効率化、成果指標の開示といった一連の施策を“実践のロードマップ”として提示。ジェニファー・スタインマン氏(デロイト・グローバル サステナビリティビジネスリーダー)は、「サステナビリティへの取り組みを経済的価値創出の文脈で捉え直すことが、次の成長を生む鍵になる」とコメントしている。

